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小学校の道徳科における表現劇の創作(教育学部1・2年生合同ゼミ)
表現劇コンテスト1日目

教育学部 1年生・2年生

2022/12/27

2022年度後期の教育学部1・2年生ゼミでは、表現劇の創作に取り組んできました。小学校の道徳科の授業における導入劇という設定で、児童の多様な意見を引き出し、問題を提起するストーリーを考えます。また、言葉や体を使ったコミュニケーションの大切さを学ぶとともに、協力して課題に取り組む力を身につけます。各ゼミに所属する学生が6つのクラスに分かれ、1・2年生の混成グループを作りました。各クラスは2~3グループ、1グループは6~8人から成ります。

 

学生たちは、これまでに演劇の基礎を学ぶことやシナリオの検討、演技の練習などを行ってきました。また、10月13日(木)には、劇団うりんこの団員の方を招いて、体を使った表現を学ぶ演劇ワークショップを行いました。

 

そして、12月22日(木)に、クラスの代表に選ばれた3つのグループが、成果を発表する「表現劇コンテスト」が行われました。2回にわたり行われる発表会の1日目の内容と最優秀作品を、審査に参加してくださった「劇団うりんこ」の小原ひろみさんの講評とともに紹介します(2回目のコンテストは、2023年1月12日(木)に行われます。結果は、ホームページで紹介します)。

3チームの発表作品と講評

「大切なもの」 チーム名:アンパンマン

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物語

小学校低学年のあるクラスでは、学校の花壇でチューリップを育てています。水やりを任されていた「のりおくん」は、ある日、隣のクラスの「つよしくん」たちから鬼ごっこに誘われました。水やりの道具をその場に置いたまま鬼ごっこを楽しんでいると、道具につまづいた「つよしくん」が、大切に育てていた花の上に倒れてしまいました。慌ててしまった彼らは、どうしたらよいか分からず、鬼ごっこを止めて家に帰ってしまいました。

 

翌朝、大切な花が折られているのを見つけた他の児童が、担任の先生に報告をしました。先生は、クラスの皆に「どうして花がこのようになってしまったのか」を尋ねますが、誰にも分かりません。鬼ごっこをしていた「のりおくん」が知らないふりをしているので、犯人探しが始まってしまいました。先生は、他のクラスに尋ねて事情が分かってきたので、「のりおくん」や「つよしくん」たちを呼んで直接聞いてみることにしました。しかし、水やりの道具を置いていた「のりおくん」も、花を折ってしまった「つよしくん」も自分がしたことを認めませんでした。

 

犯人探しが始まってしまったクラスの中では、対立が生じてしまいました。「のりおくん」や「つよしくん」、花を大切に育てていた児童たちは、これからどうしたらよいのでしょうか?

 

講評

ノリのよい「のりおくん」や強気で強情な「つよしくん」など、8名の登場人物の名前が性格を表している点が、工夫されていました。また、小学校低学年の会話がセリフでよく再現されていました。暖かさや寒さを表現する体の動きによって季節感や時間の変化が伝わりました。クラスの中で生じた対立をもっと鮮明に描くと、観客の共感をさらに高められたでしょう。

  • あるクラスのホームルーム

  • 花壇に球根を植える児童たち

「私の好きな人…」 チーム名:劇暖好(げきだんこう)

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物語

「これは、私が4年生の時の話です」というナレーションから始まります。黒板の文字を消していた「りんかちゃん」が高いところに手が届かなくて困っていると、隣にいた「げんきくん」が手伝ってくれました。別なある日、「りんかちゃん」の落とし物を拾ってくれたのも「げんきくん」でした。こうしたことから、「げんきくん」に好意を持つようになった「りんかちゃん」は、親友の「ほのかちゃん」に、自分の好きな人が「げんきくん」であることを打ち明けました。絶対に誰にも言わないという約束と一緒に。

 

「ほのかちゃん」は、「りんかちゃん」と「げんきくん」の仲を手助けしたいという思いから、このことを友達に電話で伝えてしまいました。友達は、さらに別の友達にSNSを通じて伝えてしまいました。このように、噂はどんどん広まってしまい、「りんかちゃん」の好きな人が「げんきくん」であることを学年全体が知ってしまいました。

 

困惑した「りんかちゃん」は、「ほのかちゃん」に、打ち明けたことを他の人に話していないかと尋ねますが、「ほのかちゃん」はそのようなことはしていないと答えました。噂の的になってしまった「りんかちゃん」は、学校に行きたくなくなり、ずっと休んでいます。クラスの皆は、心配をしますが、どうしてよいか分かりません。このようなことになってしまったのは、誰が悪かったからでしょうか?

 

講評

「これは、私が4年生の時の話です」という最初のナレーションで、物語りの枠組みが示されていたことがよかったです。途中で過去の場面が効果的に再現されており、場面の切り替えをする時に舞台を無人にしたことも、集中力を高めるよい方法でした。「誰が悪かったのか」という問いが、この劇の本当の目的だったのかを再検討してみましょう。より適切な問いかけが、他にもあるかもしれません。

  • 黒板の文字を消す「りんかちゃん」と「げんきくん」

  • 一人で悩む「りんかちゃん」と噂話をするクラスメート

「秘密はいけないこと!?~サプライズ大作戦!!!~」 チーム名:ココロん

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物語

仲良し6人組が、いつものように学校から帰ってきます。これからもずっと一緒にいられると思っていた6人ですが、「カンナ」が「ゆうこ」に突然、転校することを告げました。そこで、「ゆうこ」たちは、「カンナ」のためにサプライズのお別れ会を開こうと考えました。サプライズなので、「カンナ」には知られないよう秘密を守っていかなければいけません。

 

この時から、「ゆうこ」たち5人は、「カンナ」に対してよそよそしい態度をとるようになりました。「カンナ」を置いて先に帰ってしまったり、遊びに誘っても「予定があるから」と言ってどこかに行ってしまったりします。不思議に思った「カンナ」が、「なぜ、一緒に遊んでくれないの!」と問い質しますが、5人は「関係ないから!」と言って理由を教えてくれませんでした。

 

「カンナ」のためにサプライズをしようと考えたのに、これでは関係がおかしくなってしまいます。「ゆうこ」は、「本当にこれでよかったのか?」と、心の中の「もう一人ゆうこ(ココロん)」に問いかけました。「ココロん」は、「ゆうこ」に過去の場面を回想させました。一つひとつの場面を振り返りながら、「ゆうこ」は「本当は、「カンナ」を喜ばせたかった。でも、仲間外れはよくなかったのでは?」と疑問を感じました。そして、「皆ならどうする?」と尋ねるのでした。

 

講評

過去の場面に戻り「カンナ」の孤独感が深まっていく様子を再現したことは、問題となったポイントを観客がもう一度考えられるようにしたよい工夫でした。「ココロん」というキャラクターを使って「ゆうこ」の心の中の対話を表現したことも優れていました。「皆ならどうする?」、「私は…」という最後の場面にもう少し余韻を持たせると、問いにもっと重みが加わったでしょう。

  • ドッヂボールで遊ぶ仲良し6人組

  • 仲間良しグループ内の対立

最優秀作品と各チームのメンバー

チーム「ココロん」の「秘密はいけないこと!?~サプライズ大作戦!!!~」が、最優秀作品となりました。「カンナ」の孤独感が深まっていく様子が、場面の変化によってよく表現されていたという評価でした。「ココロん」というキャラクターを登場させ、「ゆうこ」の内面の葛藤を表現した点も、オリジナリティがありました。

 

3チームの作品はいずれも、小学校で起こりそうなテーマや場面が設定され、児童の共感を呼ぶものでした。セリフの受け渡しはスムーズで、各チームとも十分な練習を重ねてきたことがうかがわれます。言葉や体の動き、舞台の使い方などの表現の工夫も多く見られました。ここで学んだことが、様々なコミュニケーションや協働の場面で活かされることを期待します。

チーム「ココロん」の7名と1日目の最優秀作品を表彰する向山学部長

  • チーム「アンパンマン」の8名

  • チーム「劇暖好」の8名

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