- 佐竹ゼミの2年生が、株式会社たむらの経営課題をテーマに事業計画を提案
- 経営者へのヒアリングを通じて、売上、DX、在庫、人材育成など現実の経営課題を学んだ
- 経営者を前に事業計画のプレゼンテーションを実施
- 「雇う側」の視点で考える経験が、将来の進路やキャリア形成につながる
経営学科の佐竹ゼミでは、実在する企業の経営課題に向き合う「KEIAIコンサル体験プログラム」に取り組んでいます。学生たちは、中小企業診断士の日下正浩氏の指導を受けながら、株式会社たむらの現状分析、経営者へのヒアリング、事業計画の作成に挑戦中です。
20秒でわかるこの記事のポイント
経営者の声から、企業経営の現実を学ぶ
5月13日(水)、佐竹ゼミの2年生たちは分析対象である株式会社たむらの田村社長を教室に迎えました。学生たちは事前に同社の財務状況や業界環境を調べ、自分たちなりの仮説を持ってヒアリングに臨みました。
田村社長から語られたのは、創業70周年を迎える企業としての歩みと、2045年までに「1000店舗・売上1000億円」を目指すという長期ビジョンです。同社は「Happy & Smileの創造」という経営理念を掲げ、学生服の販売を通じて地域社会に貢献しています。
DXは売上だけでなく、働く人の笑顔を支える手段
学生たちは、経営者に直接質問できる貴重な機会を活かし、「どの店舗が一番売れていますか」「ITやDXは売上に直結していますか」など、経営の核心に触れる質問を投げかけました。
中でも関心を集めたテーマの一つが、DXの目的でした。学生が「IT活用は売上に直結していますか」と尋ねると、田村社長はITが直接売上を上げるわけではなく、DXよって事務作業が効率化され、社員が接客に集中できるようになること。そして、残業を減らし、翌日も笑顔でお客様に向き合える環境づくりにつながっていることを語りました。
この話から、学生たちはDXを単なる売上向上の手段としてではなく、働く人の負担を減らし、企業理念である「Happy & Smile」を実現するための仕組みとして再認識することができました。
ジェンダーレス制服については、多様性に対応するため女子用スラックスの用意は必要である一方、学校によっては20本用意しても5年間で数本しか販売されない場合があるとのことでした。社会的要請に応えることと、在庫リスクを抱えること。その両立の難しさに、学生たちはシビアな中小企業経営の現実を感じ取りました。
※DXとは、デジタルトランスフォーメーションの略で、デジタル技術を活用して業務やサービスのあり方をより良く変えていく取り組みのこと

アイデアを「事業計画」に変える1ヶ月
ヒアリング後、学生たちは3つのチームに分かれ、約1ヶ月かけて事業計画の作成に取り組みました。
佐竹ゼミが重視しているのは、「雇われる側」ではなく「雇う側」、つまり経営者の視点で考えることです。日下氏は、田村社長から聞いた内容を整理し、チーム内で共有することの重要性を学生たちに伝えました。
学生たちは、店舗ごとの売上状況やDXに込められた考え方、在庫リスクなどを振り返りながら、株式会社たむらの課題を整理しました。そして、経営者の言葉を手がかりに、どの課題に着目し、どのような戦略を提案するのかを検討していきました。
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経営コンサルタントの日下 氏
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学生からの質問に答える田村社長
事業計画を経営者の前で発表
未来の顧客と信頼関係を築く「体験型アフタースクール」
6月17日、田村社長を前に最終プレゼンテーションが実施されました。最初のチームは、小学校5・6年生を対象とした「体験型アフタースクール」を提案しました。制服の端切れを活用したものづくり体験や宿題サポートなどを通じて、制服購入が必要になる前の段階から児童や保護者との接点をつくる構想です。
学生たちは、単に新規事業を立ち上げるのではなく、将来の顧客との信頼関係を早期に築く点に着目しました。制服製造の技術や地域店舗の存在を活かし、株式会社たむらならではの価値を保護者に伝えることを目指しました。
田村社長は、投資コストや人材教育には検討が必要だとしながらも、未来の顧客に焦点を当てた発想を評価しました。田村社長からは店舗の空きスペースを活用する案が、佐竹教授からは他社との連携についても意見が出るなど、事業の具体化へ議論が発展していました。

若者の感性を活かしたキャラクターコラボ
続くチームは、「1000店舗・売上1000億円」へのロードマップを描くとともに、知名度向上を目的としたキャラクターコラボレーションを提案しました。サンリオなどの人気キャラクターに制服を着せた限定グッズや広告展開を通じて、SNSでの拡散を狙う戦略です。
同チームは、制服販売店としての認知を広げるためには、保護者だけでなく、制服を着る子どもや若者の感性に届く発信が重要だと考えました。学生たちは、最近まで制服を着ていた世代として、消費者に近い視点から提案を組み立てました。
また、AI自動採寸アプリの導入による利便性向上も提案しました。採寸の負担を軽減し、店舗の混雑緩和や顧客体験の向上につなげる狙いです。
田村社長は、キャラクターコラボについて「非常にやりたい内容」と関心を示しました。AI採寸についても、社内で少しずつ開発を進めているテーマであることが共有され、学生の提案が企業の方向性と重なる場面となりました。

少子化を見据えたBtoB市場への参入と人材育成
最後に発表したチームは、少子化によって学生服市場の縮小が見込まれる中、企業向けユニフォーム市場への参入を提案しました。医療、介護、建設などの分野を想定し、BtoB市場へ事業領域を広げることで、新たな収益機会をつくる構想です。
同チームは、外部市場の開拓だけでなく、それを支える社内体制にも注目しました。DXやBtoB営業を推進できる人材を社内で育成する仕組みを整えることが、今後の成長に必要だと提案しました。
日下氏は、人材育成という内部体制にまで踏み込んだ点を評価しました。企業が成長するためには、新規事業のアイデアだけでなく、それを担う人材や組織づくりが欠かせません。学生たちは、経営を外から見るだけでなく、組織の内側から支える視点も学んだようです。
※BtoBとは、企業が企業に向けて商品やサービスを提供する取引形態のこと。

正解のない問いに向き合い、経営者の視点を身につける
「KEIAIコンサル体験プログラム」では、あらかじめ用意された正解はありません。学生たちは、自ら仮説を立て、経営者の話を聞き、データや現場の声をもとに提案を修正していきました。
今回の経験は、事業計画を作成するだけの学びに留まりませんでした。田村社長が語った長期ビジョンや、資金繰り、在庫リスクといった経営上の課題に触れることで、学生たちは企業経営における意思決定の重みを学びました。
就職活動や将来のキャリア形成においても、企業を「働く場所」として見るだけでなく、「価値を生み出し、雇用を支え、地域社会とつながる存在」として捉える視点は大きな力になります。佐竹ゼミの学生たちは、地域企業の経営課題に向き合う実践を通じて、教室で学んだ知識を社会の現場で活かす一歩を踏み出しました。

学生の提案を写真に残す田村社長

