- 教育学部1年生が、自分の出身小学校や地域の魅力を3分間でプレゼンテーション
- 発表後には伊坂教授が話し方や資料作成について講評
- 学生同士でも評価やコメントを行い、互いの良い点から学び合う
- 教師に必要な「伝える力」「表現する力」を1年次から実践的に身につける
- 地域を教材として活用する視点など、教員としての発想力も養う授業
20秒でわかるこの記事のポイント
教育学部1年生を対象とした「口頭表現」の授業は、教員になった際に授業で活用するためのヒントとなる言語活動を多く取り入れた必修科目です。この日は、
発表後には伊坂教授から講評があり、内容だけでなく、話し方や視線の向け方、スライドの見せ方などについて具体的なアドバイスが送られていました。「聞き手の顔を見ながら話すこと」「強調したい言葉の前に間を取ること」など、将来教壇に立つために必要な視点が随所に盛り込まれていました。また、発表後には学生同士が互いの発表を評価し、「どこが良かったのか」まで考えてコメントを記入します。発表する力だけでなく、他者の良さを見つけて言葉にする力も育まれます。終始和やかな雰囲気の中で学びが進められており、教師に欠かせない「伝える力」の基礎を、1年次から実践的に身につけることのできる授業です。
なぜ今、「伝える力」が求められているのか(伊坂教授より)
現在の学校では、子どもたちに「言語の力」「情報を活用する力」「課題を解決する力」を育てることが重視されています。中でも、自分の考えを相手に分かりやすく伝えたり、相手の話を理解したりする「言語の力」は、国語だけでなく、すべての教科で育てることが必要とされる大切な力です。こうした背景から、教師にも教科の知識だけでなく、子どもたちの言語能力を育てる授業づくりが求められています。「口頭表現」は、その基礎となる「論理的に考える力」「感性や感情を表し、理解する力」「伝える力」を、1年次から実践的に学ぶ授業です。

伊坂 淳一 教授
実践を通して「伝える力」を身につける
前期の「口頭表現」と後期開講の「文章表現」では、教員自身に必要な言語能力と、子どもたちの言語能力を育むための授業づくりに意識を向ける力を身につけることを目的に、多彩な実践活動を取り入れています。例えば、
- グループワークやディスカッション
- 「声優になろう」「なりきりで語ろう」といったバーチャルな表現活動
- 「ショウ・アンド・テル※」を取り上げたスピーチや「わたしの街のいいところ紹介」をテーマにしたプレゼンテーション
- 大学生活を高校生に伝えるインタビュー動画の制作
- 言語技術教育の試行と概要についての講義
など、話す、聞く、考える、協働する力を育てる課題を段階的に設定しています。学生が実際に体験しながら学ぶことで、将来子どもたちの前に立ったときに活用できる授業づくりのヒントも身に付けられるよう工夫しています。
※ショウ・アンド・テル:自分にとって大切なモノや体験をみんなの前で見せ(Show)、それについて言葉で説明する(Tell)プレゼンテーションやスピーチの活動のこと
「伝えたい」を育てる授業へ
この授業のねらいは、「正しい話し方」を身につけることが第一の目的ではありません。学生一人ひとりの「伝えたい」という思いを尊重し、自分らしい表現を考え、試行錯誤する過程を重視しています。また、グループで協力して作品をつくったり、お互いの発表を評価し合ったりすることで、多様な考え方に触れる機会も大切にしています。さらに、発表資料やパワーポイントスライド、動画など、学びの成果が「形」として残る課題を取り入れています。
「正しい、優れたことばを使おう。」は、およそ人の学習のモチベーションとしては、薄弱です。「いい動画を作ろう。その中で、ことばや表現を工夫しよう。」と思えることで、学生は前向きになれます。教員が答えを示すのではなく、学生自身が考え、悩み、工夫しながら学ぶことも、この授業の大きな特徴です。

私自身も試行錯誤の繰り返し
もちろん、授業が毎回思い通りに進むわけではありません。また、15回の授業だけで言語能力が大きく伸びるわけでもありません。大学での学びの土台となる力を育てることは目標の一つですが、短期間で身につくものではないと考えています。だからこそ、この授業の中だけで顕著な成果が出るわけではありません。
大学4年間を通して、そして将来教員になってからも、自らの言語能力を磨き続けようとする姿勢を育むこと、そして、子どもたちの言語能力を伸ばす授業や教育活動を自ら考え、実践していこうとする意識を持てることを目標にしています。そうした少し先の未来を見据えながら、試行錯誤を重ねて授業に取り組んでいます。

履修学生からのコメント
Y.Hさん(1年)志学館高等部出身
ほとんど知らない人たちとグループ活動を行う機会が多く、最初は緊張しました。しかし、話し合いや発表、じゃんけんを取り入れた活動を通して、自分から積極的に話しかけたり、自分の考えを相手に伝えたりする力が身についたと感じています。また、相手の意見を尊重しながら協力して活動することの大切さも学びました。授業を重ねる中で、人前で話すことへの苦手意識も少しずつ減り、自信につながりました。
将来教員になったときには、子どもたちが安心して意見を伝え合える雰囲気づくりを大切にし、一人ひとりが主体的に参加できる授業を実践していきたいです。

Y.Iさん(1年)屋久島おおぞら高校出身
「教師は演技者である」という伊坂先生の言葉が印象に残っています。教師は知識を伝えるだけではなく、表情や声の大きさ、視線、話し方などを工夫しながら、児童の興味や意欲を引き出すことも大切なのだと学びました。また、授業を通して、相手に伝わりやすい話し方や、人前で自分の考えを分かりやすく表現する力が身についたと感じています。
将来教員になった際には、児童自らが学びを楽しめるような授業づくりを目指し、口頭表現で学んだことを生かしていきたいと思います。

K.Nさん(1年)千葉県立袖ヶ浦高校出身
学生である自分のことをいかに教員だと思い込んで授業に取り組むことができるか、を意識して授業を受けています。将来教壇に立った時、児童たちの前で話す際に気を付けなくてはいけないことを、この授業ではたくさん学びました。自分の宝物や地元を紹介したり、キャラになりきって文章を読んだりしました。間をあけることや声に変化をつけること、手を固定することなどを意識できるようになりました。
「手を不用意に動かさず固定することで、紹介している物にのみ視線を集めやすくなる」という話を聞いたときは、「そんなところにまで発表をよくするためのヒントがあるのか!」と、とても興味深かったです。
今後の授業でも新しい学びを見つけられそうなので、考えるととても楽しみです。

O.Tさん(1年)千葉県立銚子高校出身
話し方や発表のスキルが向上しているという実感があります。声の高さや間をあけたりする話し方の表現だけでなく、スライドを使って発表するときに目線を聞き手に向けて話す、手を使って表現する、などの技法が身につきました。また、自分だけでなく相手の話し方や発表の仕方を相互評価していくことで、良い点や改善点にも気づくことができます。
これから教員を目指していくなかで、コミュニケーションスキルは欠かせないと考えています。口頭表現で身につけた学びは、これから始まる教科指導法だけでなく、教員になったときにも子どもたちの前で活かせると感じています。

M.Aさん(1年)千葉経済大学附属高校出身
人前で話すことへの意識が大きく変わりました。実際に発表を重ねる中で、相手に伝わるように話すことの難しさや、自分の言葉で分かりやすく伝えることの大切さを学びました。また、子どもたちの立場に立って考えることの重要性も実感し、どのような話し方や伝え方であれば理解しやすいのかを意識できるようになりました。
教員になったときには、一方的に説明するのではなく、子どもたちの気持ちや理解度を考えながら、自分の言葉で分かりやすく伝えられる教師を目指したいです。

教壇に立つその日のために
教師は知識を持っているだけではなく、それを分かりやすく児童に伝える力が求められます。そして地域の魅力や特色を教材へと結びつける発想力も必要になってきます。この授業は、そうした教師としての基礎的な資質や能力を育む第一歩として、大きな意味を持っています。学生たちがこれからの3年間で経験を重ね、さらに表現力を磨いていく姿が楽しみです。






