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「教師になるだけが道じゃない」
教育学部卒のSさんが選んだ民間企業という進路

教育学部2025年3月卒業 S・Mさん

千葉県立東金高等学校 出身

2025/08/04

この春、教育学部を卒業したSさんが真新しい名刺を手に、恩師である小林輝明教授のもとを訪れました。教員免許を取得しながらも、Sさんは教職の道を選ばず、東証Prime上場企業の学習塾で総合職としてのキャリアをスタートさせました。

「教育学部に進学したら、教員になるしかない?」そんな疑問を抱く受験生も少なくないはずです。今回は、教育学部で学んだ知識を活かし、学習塾で新たな風を吹かせようと挑戦するSさんの姿を、小林教授との対談を通じてお届けします

卒業生にインタビュー

小林教授
小林教授
もともとは教員志望だったよね?

Sさん:そうなんです。高校生の頃、資格を取ることが重要だと考えて、得意な勉強を活かせる教員免許を取りたいと思いました。高校の先生に「教員免許取るなら敬愛」と勧められて敬愛大学へ進学しました。

小林教授
小林教授
入学してみてどうでした?

Sさん:1年生の前期は教育理論の授業が多く面食らいました。でも後期に入って指導案を作るようになると、「先生が言っていたのはこのことか!」と理論と実践が繋がってきて面白くなってきました。また、1年次は交友関係がこれまでで最も広がった年でした。教育ボランティアIrisや敬愛フェスティバルの実行委員を通して、先輩やOB・OGの方とも関わることができたのは、自分にとって大きな経験になりました。高校生の時は、自分は落ち着いている性格だと思っていましたが、人と接するのが好きなことに気付きました。

 

Sさんはまじめだし、何にでも一生懸命。教員に向いてると思っていました。私は教育学部に入っても教師にならずに別の道に行っても良いと思っているのですが、どうして企業就職を選んだのですか?
小林教授
小林教授

Sさん:ターニングポイントは教育実習でした。3年次の後期、教育実習にいきましたが、とても楽しかったんです。母校は小規模校で、子どもたちが「先生~!」と駆け寄ってきてくれて――周りの教員の方にも大変よくしてもらいました。指導教諭の方は大ベテランで、尊敬できる先生でした。でも、冷静に振り返ってみると、教育実習は教員の仕事のおいしいところをつまみ食いしているだけではないかと思ったんです。実際には、学習指導や生活指導、業務分掌、保護者対応など多くの仕事があり、これらを全てはこなせないな。せっかく好きだった「教育」が嫌いになってしまわないかと感じました。私は何でも完璧にしたいタイプなんです。授業準備や宿題を適当にできないので、長くは続かないかもしれないと思いました。

 

そういった相談についても、小林先生はさっぱりしている先生でしたので、相談がしやすかったです。先生に相談に行ったときには教員への一本道を示されると思いきや、「自分のやりたいことをするのがいい、応援してるよ」と背中を押してくれたんです。

 

自分の好きな道に進むのがいいと思うよ。たった一回の人生なんだから。教師は免許さえ取っておけばいつでも挑戦できるから。迷っているなら、自分のやりたいことを経験してからでも遅くはない。
小林教授
小林教授

 

Sさん:そうそう!当時も同じことをおっしゃっていました。教育実習後、3年の12月~2月の間はすごく悩みましたが、思い切って就活してみようと決心しました。家族に話すと、大反対! 両親は一般企業で利益を求め続ける辛さを経験してるので、教員になってほしい、公務員になってほしいという願いがあったようです。それでも私の決意は揺らぎませんでした。小林先生も言われた通り、若いうちに一般企業で経験を積んで、時が来れば教師になろうと決心しました。また、中学時代の恩師が社会人経験を経て教員になった方で、教師の型にはまらないところが印象的でした。当時のことを思い出すと、そんな教師への道もあるのだと勇気づけられたんです。

 

卒業生の来校に喜ぶ小林教授

教員は絶対にならないというわけではなく、いつかはその世界に行くかもしれないと。自分の可能性、やってみたいことを優先したというわけですね。就職活動はいかがでしたか?同じ教育学部の学生のほとんどが教員採用試験に向かって頑張って行くわけでしょう?
小林教授
小林教授

 

Sさん:他学部であれば、3年生になると周囲に就職活動の空気が漂ってくるものでしょうが、教育学部では教員採用試験が主な進路であり、時期も対策も異なります。ですので、就職活動はキャリアセンターを頼りました。

私は学生生活の中で様々な活動を経験してきましたが、それらをどのように企業にアピールすればよいのか分からず、悩んでいました。キャリアセンターで相談に乗ってくれた方とはとても相性が良く、履歴書の書き方など、一から丁寧に指導してもらいました。教育業界に絞って就職活動を進める中で、大学で学んだ知識や教育現場での実践経験、教育ボランティアIrisの活動、どれも自信を持って語れる強みであることに気づきました。「あとはそれを、どのように企業の理念やニーズに結び付けるかだけだよ」とアドバイスをもらい、前向きに取り組んだ結果、東証プライム上場の進学塾に総合職として内定を得ることができました。

 

小林教授
小林教授
まだ入社して間もないですが、会社員生活はどうですか?

 

Sさん:数字を追いかけるのは、やはり大変でした。現在は夏期講習の申込獲得が大きな目標となっていますが、先日、あと一歩届かず、とても悔しい思いをしました。主な業務は講師で、今はオンライン授業を担当しています。小学校3年生から中学3年生まで、対象学年の幅が広く、教科も複数にまたがるため、とても大変です。

 

小林教授
小林教授
教育学部で4年間学んだことが今の仕事に活かされていますか?

 

Sさん:最も活かされているのは、授業設計や指導技術です。塾のアルバイト講師の授業を見ると、前回のおさらいもせず、いきなり授業を始めてしまうといった授業運びを目にすることもあります。指導技術を学んできた側からすると、児童や生徒の目線に立って授業をしてほしいと思ってしまいます。

教育学部では児童・生徒が主体的に学習に取り組むことの大切さを学んできました。私はこれまで、「小学校では主体的な学びを育み、学習塾では知識を教え込む」というように、役割が異なるものと考えていました。しかし、小・中学校で授業に関心を持てない子どもたちは、塾に来ても学習に関心が持てず、教え込んでも理解しないままで終わってしまいがちです。そういった子どもたちの興味をどう引き出したらよいのか。そこに私が教育学部で学んできたことを活かせる場があると感じています。将来的には管理職を目指して、こうした教育のあり方をよりよくしていきたいと思っています。現場で働くアルバイト講師にも、子どもたちに寄り添った指導法を共有し、塾の教育力を高めていきたいと考えています。

 

小林教授に聞く!教育学部に入って教員にならなくても良いの?

私は教職センター長として、教員採用試験の合格者を一人でも多く輩出できるように主導する立場です。一方で、「教師にならなくてもいいんだよ」というスタンスも大切にしています。教育学部の学生にとって教師になることだけが全てではありません。むしろ、進路を「教員」に限定してしまうことで、視野を狭めてしまうのは避けたいと考えています。私は、学生の皆さんには、在学中にできるだけ多くの経験を積み、その中で自分の興味や関心を深めながら、最終的に自分に合った将来を選んでほしいと思っています。大学卒業後にすぐ教員になる道もあれば、一度企業で経験を積んでから教員を目指すという選択肢もあります。どちらの道であっても、私は心から応援したいと思っています。たった1回の人生です。だからこそ、後悔のない進路を選んでほしいのです。

私が常に意識しているのは、「敬愛大学で過ごした4年間が、本当に充実したものだった」と学生に感じてもらえるようにすることです。だからこそ、Sさんのように教職の道には進まなかった卒業生が、大学を訪問してくれるというのは、本当に破格の喜びなんです。

 

高校生のうちに将来を決めるのは、とてもむずかしいことです。教育学部に入ると、先生になるしかないと感じるかもしれません。でも、教育を学んだからこそできる仕事は、ほかにもたくさんあります。「人を育てたい」「力になりたい」と思う気持ちは、学校の外でも生かすことができます。今の時点で「先生に向いているかどうか」と悩みすぎなくても大丈夫。大学での学びや経験を通して、自分に合った道がきっと見えてきます。Sさんのように、教育の学びを活かして、自分らしい未来を選ぶこともできるのです。