国際学部で学びながら、副専攻「日本語教員養成課程」も履修し、日本語教師の資格を取得した卒業生にインタビューを行いました。学部での学びと同じくらい、この副専攻での学びに力を注いでいたそうです。卒業後、どのようなスキルを活かして活躍されているのでしょうか。
日本語教師の資格を活かして企業内日本語講師に
大学生の頃から、異なる文化を持つ海外の人々に日本語を教えるということに興味がありましたが、同時に空港関連企業での仕事にも憧れていたため、成田国際空港でグランドハンドリングの業務を担う企業に新卒で入社しました。そこには海外からの技能実習生が多く在籍しており、彼らへの日本語教育が必要とされていました。私が大学で日本語教師の資格を取得したことを話すと、日本語教育のクラスを設置することが企業として正式に決定され、私は社内講師として、外国人に日本語を教えることになりました。
副専攻でお世話になった長谷川先生にこのことを相談したところ、外国人のための日本語コースブック『いろどり 生活の日本語』(国際交流基金日本語国際センター)という教材を紹介いただきました。さっそく使ってみたところ、とても使いやすく、日本語を教える上でためになる教材でした。実習生の皆さんには、仕事の後や休みの日などに時間を設け、主に日常生活で使う日本語を中心に教えました。社内講師は日本語教師の資格を大いに活かすことができる業務でした。
実際の教材(自作のものや、『いろどり 生活の日本語』を含む)
日本語を学び始めた実習生の変化
日本語を学び始めた彼らは以前よりも明るくなったり、現場で積極的に声をかけてくれることが増えました。同僚からも、「実習生の雰囲気がよくなったね」と言われたりしました。「次の勉強会はいつですか」など、楽しみにしてくれている実習生もおり、もっと彼らのために頑張りたいと思いました。授業後にアンケートを取り、どのような勉強がしたいのかを集計して、できるだけ希望に添えるような内容を考えました。どのように授業を組み立てたらよいか創意工夫するのは大変でしたが、大きなやりがいや達成感が得られました。
日本語と向き合い、成長していく彼らの姿を見て、日本語学習に対する強い意欲を感じました。また、日本の印象や、普段の生活で苦労したエピソードなどを聞いていくうちに、外国人労働者の人々がよりよい生活が送れるよう、サポ-トしたいと強く感じるようになりました。このことがきっかけとなり、本格的に日本語教育に携わることを考えはじめました。
現在のお仕事について
その後、日本語学校と技能実習生の研修センターを運営する会社に転職しました。現在は外国人技能実習生のための研修センターで、日本語教育や生活指導を行っています。また、その他の事務作業(役所での手続きや病院への引率、資料作成など)も行います。週に1回程度は日本語学校へ出勤し、留学生に対する日本語教育を行っています。
これらの業務に携わってみて、日本語教育と一口に言っても、「学習者の意欲」「教授法」「教える日本語のレベル」など、様々な要素で構成されていることに気づきました。日本語を教える能力を高めるために、教師として学ぶ内容は多岐にわたります。日本語をひとつの言語として教える事の難しさを改めて感じました。
外国人が日本で働く上での課題
日本で働いて2、3年目の技能実習生の通院に付き添った時のことです。会話をしてみると、日本語の語彙のレパートリーがとても少ないことに気づきました。スムーズに会話ができず、ゆっくり話してみても会話が困難でした。同じような業界で働く友人からは、「全く日本語が話せない実習生は多く、企業間でのトラブルもある」と聞きました。
技能実習生の失踪はいま、大きな社会問題になっています。ニュースなどで耳にしたことがある方もいると思います。入国した時点で日本語での会話がある程度できる実習生もいますが、全くできない実習生もいます。研修センターでは約1ヶ月間日本語を勉強しますが、挨拶しかできず、ひらがなもすらすら読めない、生年月日を言えない実習生もいます。そのような方々が企業に配属されてしっかり仕事をしてゆけるのか、不安を感じながら見送っているのが現状です。1ヶ月の日本語教育ではできることに限界があるため、日本で働きたい海外の人々にとって、これは大きな課題だと感じています。
今後の目標
外国人は、日本人と接する機会が多ければ多いほど日本語力が向上していくということを、前職で身を持って感じました。現在は主に、実習前の技能生に日本語を教えていますが、今後は、日本で頑張っている技能実習生や就労中の特定技能生に対する日本語教育を行えるようになることが目標です。外国人労働者の力になりたいと強く思っているので、最終的には前職のように、就労中の外国人を対象としたサポートや日本語教育を専門に行っていきたいです。
日本語教育に興味がある在学生や高校生の方へ
日本で働きたい外国人の人々に対する支援は、まだまだ不足しています。敬愛大学で学びながら、日本語教育に興味をもってくれる仲間が増えて欲しいと思います!私たちと一緒に、日本語教育の未来を考えていきましょう。
日本語教員養成課程
国際学部での学び