「ホテル・ビジネス論」は、宿泊業についての発展史から近年の経営形態の変化等の新たな動きまで、多方面から総合的に学ぶ科目です。今年度の観光マネジメント専攻の科目に総じて言える傾向ですが、経済学部からの履修が増えており、直近にはホテルに就職した卒業生もいます。実際、ホテル人材は今、広く求められています。
1月23日は「ホテル・ビジネス論」の今年度最後の授業でしたが、パーク ハイアット 東京の松村副総支配人にご協力をいただき、特別講義を実施しました。70名を超える履修者のうち、ほぼすべての学生が参加し、この授業にかける期待が伝わってくるようでした。
1994年に西新宿で誕生し、当時話題となった「新御三家ホテル」の一つ、そしてスモールラグジュアリーホテルの代表格であるパーク ハイアット 東京を中心に松村氏は、講義を進めていきました。講義が始まると、学生たちが固まる席に向かい、フランクに、温かく話しかけ、すぐに学生が松村氏の語りに惹き込まれていました。
松村氏は新しい商品(ホテル)について、自動車やファッションブランドを例に、人がモノを好きになる要因の一つに、感情的な理由が大きいことを指摘しました。「どんなに機能の優れたものが出てきても、人が惚れたものや愛着を持っているものには勝てない」と言い、消費者の心理についてわかりやすく説明してくれました。
ホテルの短いビデオを視聴 ハイアットブランドがビジュアルを通して伝わってくる
パーク ハイアット 東京は5月に一時的にクローズとなり、内装の全面的な改装期間が始まります。「その前にぜひ学生の皆さんにホテルを実際に見学してほしい」というありがたい申し出があり、この授業でホテルツアーの希望者を募ることになりました。
大人数のクラスでも1人1人に語りかけながら授業を進める松村氏
2月19日、パーク ハイアット 東京のホテルツアーの実施
こうして2月19日にホテルツアーを希望した学生9名と引率教員2名で、パーク ハイアット 東京を訪れ、ホテルツアーを実施しました。特別講義で学生に説明があったとおり、現在の平均客室単価は14万円と、一般庶民には手の届きそうにない額です。しかし、コロナ禍で訪日外国人が利用しない時期には、新たなマーケットの開拓として、国内のファミリー層にも泊まれるような企画を発信し、宿泊稼働率を高めるさまざまな取組みがなされたそうです。
特別に用意された会議室で、松村氏と鈴木氏から導入講義をうける学生たち
このホテルが位置する新宿パークタワーの建築は、近接する東京都庁の建築を手掛けた丹下健三氏によるものです。そしてホテル内は開業当初から一貫して、ジョン・モーフォード氏がインテリアや照明など、ホテル内部のすべてをデザインしていることが、特筆すべきことの一つなのだと、認識を新たにしました。ホテルツアーでは、ジョン・モーフォード氏がインスピレーションを受けたアーティストの作品が、ホテルのあちらこちらに飾られており、実際にその作品の前で丁寧な説明がありました。数多くの文化人がこのホテルを愛し、繰り返し利用してきた理由の1つにこのような特色が関係しているのでしょう。
最上階のシグニチャーレストランについては開業当時、ニューヨークスタイルのため、日本では成功しないだろうと言われていました。しかし、この30年、常に高い評価を受け続けており、今もそのコンセプトは何一つ色褪せることもなく、憧れのレストランであり続けています。
パーク ハイアット 東京は全177室です。授業でも紹介がありましたが、世界の大規模なホテルでは5,000室を超えるものもあります。あえて客室数を177室に抑えることで、利用者一人一人へのきめ細やかなサービスができるようになるのです。
実際にスイートルームを含むいくつかの客室を見学し、ゆったり過ごせる空間づくりを体感。
最後に、最も高額なスイートルームを見学しました。入室するとグランドピアノの存在感に圧倒されました。本棚には興味深い本が並べられ、ゆったりとした空間でしばし非日常の至福を感じる時間でした。
パーク ハイアット 東京は5月からしばらく休館となります。今回、改修前に大変貴重な視察の機会を得ることができました。改修中であっても継続してスタッフの新規採用があるとのことです。学生の皆さんには、それぞれのホテルの特徴を学びつつ、気になるホテルが見つかったらぜひ詳細を研究し、明日のホテル人材を目指すことを、将来の選択肢の一つとしてお勧めします。
観光業界には、これからますます明るい未来が待っています。私たちはコロナ禍を経験し、観光業界のさまざまな業種の方々に寄り添って活動してきました。だからこそコロナ禍が明けた今、自信を持ってそう伝えたいと思います。
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