このゼミは、経済地理学(経済学×地理学)を学ぶゼミです。あらゆる経済現象や経営戦略を、地理学的な視点から捉え、分析することができる人物を目指します。学修方法は、テキストの輪読や、個人やグループでの調べ学習、プレゼンテーションなどです。一度は工業地域でのフィールドワーク(日帰り)も実施予定です。
学年別に見ると、まず2年に経済地理学の入門として、千葉県などの「地場産業」について学修します。各地場産業産地は、どのような場所・人・資源のもとで発展してきたか、安価な輸入品が流入するなかでいかなる産地戦略をとっているか(地域ブランドの設立など)、産業集積(同業種・関連業種が集中立地し相互関係があること)によってどのような利益が得られるかなどを議論します。
3年次以降は、「論文紹介」などを通じて、地場産業に限らず、経済・経営と地理学との関りについて学びます。具体的には、発展途上国発のファッショングッズにおけるブランド戦略、IT系企業の誘致を通じた過疎集落の再生、スポーツチームと地域コミュニティとの関わり、「温泉むすめ」による温泉地活性化の効果など、毎年様々なテーマで卒論が提出されています。
現代は、情報通信技術や、交通・輸送手段がとても発達していますね。そのようななかでも、製造業、観光業、小売業など、様々な経済・経営活動にとって「どこに立地するか」は重要な経営戦略のひとつでありつづけています。例えば、製造業は、製造コストやリスク管理、生産効率を考えて、自社工場や協力工場などの位置を考えています。小売店も、お店のコンセプトなどに沿って出店場所を決めています。同時に、企業城下町の形成など、企業の行動は地域に影響を与えます。また、地域に存在する資源をいかに再発見・利活用して地域再生につながるかは、過疎自治体の数が増える中で大切なテーマです。「入門経営学」の私の担当する回には、徳島県で行われている、はっぱビジネス(地域の高齢者らによるつまもの生産)などについてお話しています。
このように、企業の地理学的視点にもとづいた経営戦略、企業の進出によって地域が受ける影響、地域資源をいかした地域の経済・社会の活性化について、経済地理学では学ぶことができます。
私はこれまで、経済地理学のフィールドワークとして、東京、長野、千葉、徳島、山形、中国(上海など)で企業・地域の方々からお話を伺ってきました。そのきっかけは、私が東京の下町の、小さな工場と住宅が入り混じった「住工混在地域」で生まれ育だったことです。高校生くらいまでは、小さな工場は大企業によって淘汰されていってしまうのではないかという想いを漠然といだいていました。しかし、大学に進学して経済地理学の授業を受講すると、小さな工場には大工場とは異なった役割があること、小さな工場が一定の地域に集まって結びつき合っていることで競争力が発揮されていることなどに気が付きました。また、地域の人が気付いていないものも含め、地域には様々な地域資源があり、たくさんの可能性を秘めています。こうしたことについて、皆さんと教室や教室の外で勉強していきたいです。なお、プライベートでは、こどもの趣味に合わせ、ポケモンや新幹線について勉強中です。