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キラリ☆国際学科ゼミ2022.vol.2

国際学部 水口 章 教授 

2022/07/15

国際学部 水口ゼミでは、世界の地方自治について学んでいます。様々な地域住民組織のあり方や地域自治活動から生まれる地域住民のつながりについて理解を深め、多様性のある共生社会の問題・課題を解決する能力を高めることを目的としています。今回は、「地域を知り、地域を計画するための学習活動」の一環として、ブラジル、インドの地方自治の取り組みを調べた学生が発表を行いました。

自治体の予算編成への住民参加の試み(ブラジル)

今回紹介されたのは、ブラジル南部に位置し、人口140万人(ブラジルでは10番目に大きな都市)であるポルト・アレグレ市の取り組みです。1989年から、自治体の予算編成に市民が参加する「市民参加型予算(PB)」という試みが開始されました。
ブラジルでは20世紀半ばに軍事独裁政権が誕生したことから、市民の政治的権利が失われ、スラム街や無認可居住区が増加してしまいました。市民の生活を向上させるために自治体が発案したこの取り組みは、こういったクライエンタリズム※を克服するための政策であったと言われています。ポルト・アレグレ市民は、自らが生活する地域の政策に意見や要求を反映させやすくなりました。

 

その結果、不公平な行政の下で貧しい地域に十分な資源の配給がなされないといったこれまでの仕組みの在り方が変革されました。透明かつ公平で効率的な行政運営が実現したこと、地域ごとの不平等なインフラ整備の在り方も是正されたそうです。
発表者のYさんは、これらの良い結果だけではなく、PBにおけるこれからの課題、また日本の行政システムとの比較をした結果などを共有しました。

※ここでは、「政治家が私的な資源を分配することを通して、支持者との間に個人的な「庇護=忠誠」の関係を築くことで得票を得ること」を指して使用しています。

発表の様子

ケララ州の民衆運動(インド)

続いて、インド南部に位置するケララ州の取り組みについての紹介です。温暖な気候とヨーロッパ的街並みから観光地としても有名で、「インドの楽園」とも呼ばれているこの州では、インド最大のIT特区があり、電子政府化が進んでいることが特徴です。ここでは1990年代後半から、住民参加による分権化の試み(民衆運動)が盛んになりました。この民衆運動は大きく分けて5つの局面があるそうです。

 

第1局面(地区集会)
第2局面(代表による開発セミナー)
第3局面(具体的な施策を作成する実行委員の選出)
第4局面(選挙された議員による正式な計画策定)
第5局面(最終段階として州レベルでの計画決定、予算配分決定)

 

発表者のOさんは、それぞれの局面についての具体的な内容について触れ、この取り組みによって、これまで7%しか改善されていなかった行政の様々な課題(衛生的なトイレ設置等のインフラ整備)が、3年間で38%まで到達したことを紹介しました。また、子供が労働に従事させられる問題も減少し、行政組織と住民との間に信頼関係が構築されたことなどについても触れました。
これに加えてケララ州では、各地域ごとの課題を集め、誰が見ても現状の課題がわかる仕組みである「コミュニティ・カルテ」の作成を実現させました。これによって、優先順位に沿った政策を策定、実行できるようになるだけでなく、政権の影響が少ない状況下で、地域の問題点を明らかにできるようになるそうです。インドでは根強く残る「カースト制度」の影響や、共通言語による意思統一の難しさなどの課題があるため、このように州単位での政策実行や課題解決が重要な意味を持ってくるようです。

発表の様子

学生の感想(ブラジル・インドそれぞれについて)

  • ブラジルについて

・PBは透明性がありとても良い仕組みであると感じました。自治体予算とその執行過程が市民参加によって行われているというのは画期的で、納得性も高く印象に残りました。日本の自治体も積極的に採用したほうがよいと思います。

  • インドについて

・地区集会で要望を把握→自治体の課題をデータとして蓄積→解決につなげる、という仕組みが優れていると感じました。
・日本では地域政策の具体的な内容を知らないことが多いので、地域でそのような集会を開くことは有用ではないかと思いました。
・市民が要望を出し合って問題点を浮き彫りにし、改善するようなPDCAが実行されていると思います。日本でも活用したほうがよいと思いました。

 

学生の感想(取り組み全体について)

・日本と比べると海外の国々は宗教や言語が多様なので、政策の立案・実行が大変だと感じました。SDGsの目標にもある「誰一人取り残さない」を実現するためには様々な課題や配慮が必要とされる一方で、これらの多様性と共存している国々の人々は、とても広い視野を身につけることができるのではないかと思いました。
・両国とも、キーワードは「住民参加」であると思いました。日本でも国の問題を自分事として捉える視点が必要だと思いました。
・市民参加を大切にすることは、政治に関心を持ちやすくする環境を作ると思います。日本でも、これらの国々のやり方を取り入れてみれば、国民の政治的無関心が解消されるのではないでしょうか。
・両国とも、市民や住民の声が反映されたことが課題解決に繋がっていました。地域の問題は、住民が意識して決めていくことが大事で、こういった声を聴きながらの政策決定は必要だと思いました。

質疑応答の様子

水口教授より

今回のブラジルやインドの地方自治の取り組みについて、水口教授からは、「国民一人ひとりがそれぞれの置かれた環境をより良いものにすることを目指し、最良と思うことを選択した。「選び取った」ということがとても大きな意味を持つ。」という説明がありました。私たちが住んでいるまちをより良いものにしていくために政策を選び取っていくことは、選択の自由という権利と繋がっています。世界の国々の地方政策や地方自治のあり方を水口ゼミで学ぶことは、個人がどのように自由・平等を得られるようになっていくのかを考えるきっかけになるのではないでしょうか。

政策決定のプロセスについて話す水口教授

国際学部について