いじめが深刻化する背景の一つには、人間関係の中でのノリや空気の影響があると言われています。こうしたものは、ものの捉え方を知らず知らずのうちに変えてしまうところがやっかいです。典型的な例としては、最初は楽しくいじり合っていた関係性が、いつのまにか特定の誰かを攻撃的にいじるということに変容するといったことがあげられます。こうなると、いじっている側は楽しい気分のままでいるので、自分たちの行為が問題だと気づけなくなってしまいます。また、一度できあがったノリの中では、いじられている側が「いやだ」と声をあげたり、そばにいる人が勇気をもって何かを言ったりするのも難しいかもしれません。
本書では、実際に起こったことをもとにしながら、子どもたちが「これって、いじめ?」と疑問に思うような場面をマンガに描いています。また、一人だけではなく、その場面にいる色々な人たちの思いを描いています。子どもたちには、本書を読んで、気づかないうちに苦しんだり悲しんだりしている人がいないか、こういった場面で自分ならどう行動するかなど、たくさんのことを考えてほしいと思っています。先生方には、本書を教材として、いじめが起きにくいクラス・学校をつくるにはどうすればよいか、話し合いの時間をとってもらえたらと思っています。巻末では「授業を行う先生へ」と題して、授業で使う際の留意点について執筆しています。