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教育学部の学生たちが演じる道徳教材 ~演劇で問う「善悪の葛藤」~

教育学部 1・2年生合同ゼミ

2025/01/16

敬愛大学教育学部では、2022年から演劇をとり入れたユニークな授業を実施しています。今年度も「劇団うりんこ」の協力のもと、学生たちは演劇の基礎を学んできました。「教員を目指す中で、なぜ演劇が必要なの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。実は、子どもたちと接する際には、言葉だけでなく声の調子や身体の動きも使って、よりわかりやすく伝える力が必要だからです。演劇を通じて、これらの技術を身に付けると同時に、テーマを検討したり情報を調べたり、論理構成や表現方法を考えたりと、学問や研究を進めるための基本的な能力も身に付けていきます。

【昨年度の様子】教師になるために演劇を学ぶ?? ~教育学部生がオリジナルの劇で表現力を高める~

表現劇コンテストの様子

12月19日(木)、各クラスで予選を勝ち抜いてきた教育学部の1・2年生の混合チーム6組が表現劇コンテストの決勝戦に挑みました。今年のテーマは「善悪の判断」です。ある行動が一部の人には善い行いと映っても、他の人には悪い行いだと受け取られることがあります。例えば、病床の妻を救うために高価な薬を盗んだ夫の行為は一概に悪だと決めつけられるでしょうか(ハインツのジレンマ)。このような葛藤を児童にも分かりやすく表現するため、各チームが工夫を凝らして演劇を創作しました。これらの作品は対象学年(低・中・高学年)の発達段階を考慮しつつ、道徳の導入教材として使うことを想定しており、優勝チームは、実際に小学校の道徳科の授業で演じる機会が与えられます。

  • ブランコをめぐる争いから喧嘩に発展 アクションも全力!

  • 怒る保護者の役を見事に演じる学生

どのチームの発表も小学生に親しみやすい物語として「小学校」を舞台として物語が作られていました。同じテーマや舞台でも、着目点がそれぞれ違ってユニークです。子どもたちの日常にあふれる様々な葛藤が事例として取りあげられており、子どもたちが考えを深めるきっかけを提供する作品に仕上がっていました。

  • 友達との約束を優先し、父との約束が守れず叱られるシーン

  • どのチームも教室でのシーンがあり、小学生がストーリーに入りやすい

優勝チームの表現劇

優勝したチームは学校での教科書の貸し借りを題材に劇をつくりました。多くの小学校ではトラブル防止のため教科書の貸し借りが禁止されていることを背景に、教科書を忘れて困っている友人を助けたいという主人公の葛藤を描いています。友人を助けるために教科書を貸すことは悪いことなのか、校則を守ることが善いことなのか、主人公は悩みます。教科書を貸すことを選んだ主人公ですが、結局は必要な時間に教科書が返ってこず、先生に叱られてしまいます。友情にもひびが入ってしまいますが、それでもお互いの立場を理解し合いながら仲直りに進んでいくという物語です。

特に注目を集めたのは、「心の声」を役として演じた点です。主人公と相手役には、それぞれ感情の内面を表す「心の声」が設定され、2人1役で演じられました。感情を抑えた外面の主人公と、怒りや悲しみを強く表現する内面が対照的で、観る者にとって非常に興味深い演出となっていました。

審査員 小原ひろみ氏の評価

審査員を務めた劇団うりんこの小原ひろみ氏は、「主人公の外面と内面を巧みに演じ分けた点が秀逸でした。特に、心の声を役として演じることで、表面的な行動と内面的な葛藤の違いが明確に伝わる物語となっていました」と学生たちの工夫を評価しました。本作は、登場人物がそれぞれ葛藤する過程を観客をとともに考えさせ、観る人に様々な考えを芽生えさせるような作りになっています。小原氏は「道徳科の授業で用いる教材として、子どもたちの思考を深めるきっかけを与える作品」と評しました。

 

実際に小学校の授業で演じられたときの児童たちの反応が楽しみです。

左:審査員の小原ひろみ 氏 右:教育学部 畑中千晶 教授