- 国際学部の庄司ゼミが、高輪ゲートウェイ駅周辺をSDGsの視点から現地調査した
- 学生一人ひとりが異なるSDGsの目標を担当し、街の技術や環境、人への配慮などを多面的に検証した
- 現地での観察を通して、スマートシティの成果だけでなく、使いやすさや維持管理などの課題も発見した
7月24日(金)、私(国際学部教授 庄司 真理子)が担当する2年ゼミの学生たちと、高輪ゲートウェイ駅周辺で現地調査を実施しました。テーマは「高輪ゲートウェイは本当にスマートシティか?」です。スマートシティとは、デジタル技術などを活用しながら、人々が暮らしやすく、環境にも配慮した街づくりの考え方です。高輪ゲートウェイ駅周辺の開発は、SDGs(持続可能な開発目標)への貢献を掲げています。
そこで今回は、その取り組みが実際の街でどのように形作られているのか、学生たち自身の目で確かめてもらうことにしました。スマートシティへの理解を深めるだけでなく、「都市が将来にわたって暮らし続けられる場所になっているか」を考える視点を身につけることも、今回の調査の狙いです。
20秒でわかるこの記事のポイント
SDGsの目標を分担して調査の視点を設定
現地調査の前に、学生たちは「スマートシティとは何か」を調べてレポートを作成しました。そのうえで、担当するSDGsの目標を決めました。ここで一つ課題があります。スマートシティを検証しようとすると、気づいたことのすべてが目標11「住み続けられるまちづくりを」に当てはまってしまうのです。そこで学生たちは、目標11に加えてもう一つ別の目標を選び、ゼミの中で重ならないよう全員で話し合って調整しました。
同じ場所を見ても、テーマが違えば注目する点は変わります。学生たちは、それぞれが選んだ目標をもとに、現地で取り組みを探し、その効果や課題を検証しました。
一日を通して街を歩き、発見を共有
調査当日、学生たちはそれぞれのテーマに沿って駅周辺を歩きました。最初の集合では観察する場所を報告し、昼には中間報告を実施しました。最後は複合ビル「THE LINKPILLAR 2」で一日の調査結果を共有しました。
自分で見つけたことを整理してほかの学生に伝えることで、一つの街を多面的に理解できます。課題を発見する力や物事を批判的に考える力、発表する力を高めることも、今回の調査で大切にした点です。
ここからは、学生たちの報告をテーマごとに紹介します。

THE LINKPILLAR 2の喫茶スペースに集まり、液体窒素で凍らせたジュレを味わいながら、調査結果を報告しました
学生たちの報告を紹介
美しさと使いやすさをどう両立するか
目標3「すべての人に健康と福祉を」を担当したZ・Yさんは、人への配慮という視点から街を観察しました。AEDの設置、音声ガイド、車いすでも通りやすい広い歩道、気持ちを落ち着かせる水や緑の配置など、心と体の健康を支えるさまざまな工夫が見つかりました。
一方で、デザインを優先した階段には段差が見えにくいものがあり、トイレの案内表示が分かりにくい場所もありました。見た目の美しさと、使いやすさや安全性をどう両立させるかという課題も見えてきました。

「OGAWA COFFEE LABORATORY 高輪」の実験用展示物を眺める学生たち
水を循環させ、自然に節水できる仕組み
目標6「安全な水とトイレを世界中に」を担当したZ・Yさんは、「中水利用システム」を確認しました。建物で使用した水をきれいに処理し、トイレの洗浄や植物への水やりなどに再利用する仕組みです。利用者が意識しなくても節水に参加できるほか、災害時の水の確保にもつながります。一方で、設備の導入には費用がかかることや、利用者への環境教育が必要なことを課題として挙げました。
建物そのものがエネルギーを節約し、生み出す
目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」を担当したO・Rさんは、建物そのものが省エネルギーに貢献している点に注目しました。現地で見つけたのは、光を通しながら熱を遮る「膜屋根」、熱を通しにくい遮熱ガラス、光を取り入れながら発電もできる「太陽光発電ガラス」です。建物がエネルギーを節約するだけでなく、生み出す場所にもなっています。さらに、太陽の熱を利用した足湯や、AIを活用して街全体のエネルギー利用を調整する仕組みも確認しました。

高輪ゲートウェイ駅構内の「Eki Park」。光を通しながら熱をさえぎる「膜屋根」が張られている。
環境への配慮が、人の快適さにもつながる
目標13「気候変動に具体的な対策を」を担当したY・Yさんは、自動減灯照明や自然光の採光、屋上緑化、雨水の再利用、EV充電設備など、街の随所に施された環境への配慮に注目しました。植栽エリアでは体感温度が下がることも確認し、環境技術が人々の快適さに直結していることを実感しました。こうした調査から、スマートシティの本質は先端技術そのものではなく、自然の力と技術を組み合わせ、人々の安全・快適・健康な暮らし(QOL)を支える街づくりにあると考えました。

都市の緑を守り続けるために
目標15「陸の豊かさも守ろう」を担当したT・Tさんは、敷地内の植栽に目を向けました。緑には暑さを和らげ、二酸化炭素を吸収するだけでなく、昆虫や鳥の生息場所としての役割もあります。一方で、人の手によって整えられた緑地でもあります。将来までその環境を守るには、継続的な維持・管理と利用する人たちの意識を高めていくことが欠かせないと指摘しました。

現地で確かめるからこそ、学びが自分のものになる
今回の調査では、教室で知識を得るだけでなく、実際に現地を歩き、自分の目で確かめることを重視しました。SDGsを知識として学ぶだけではなく、実際の街でどのように取り入れられているのかを確かめることで、学んだことが自分のものとして身につきます。
学生たちは、高輪ゲートウェイの先進的な技術や環境への配慮を見つける一方で、使いやすさや安全性、設備の維持・管理、利用者の意識など、これから考えていくべき課題にも気づきました。今回の現地調査を通して、将来を担う学生たちが「持続可能な都市とは何か」を自分自身で考え、未来都市の在り方を模索してくれることを願っています。
文・撮影:国際学部 庄司真理子 教授/記事制作:敬愛人編集部
