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日中の「真の架け橋」をめざす卒業生―国際学部で培った多角的な視点を経営の力に

  郭 玲玲(かく れいれい)さん(明澤健康研究所株式会社 代表取締役)

2006年3月 国際学部国際学科卒業

2026/07/30

20秒でわかるこの記事のポイント
  • 中国出身の郭さんは、2006年に敬愛大学国際学部国際学科を卒業
  • 家近亮子教授のゼミで、現代中国・台湾・日本の歴史や国際関係を研究
  • 卒業後は、中国での日系企業や観光分野での仕事などを経験
  • コロナ禍をきっかけに、明澤健康研究所株式会社を設立。越境EC事業を行う
  • 国際学部で身につけた「多様性を理解する姿勢」を仕事に生かす

中国出身の郭玲玲さんは、国際学部で培った多角的な視点を生かし、日本企業の中国法人や日本の観光分野のシンクタンクで経験を積んできました。現在は明澤健康研究所株式会社の代表取締役として、越境ECを通じて日本の地域産品を海外へ届けています。そんな郭さんに、大学時代の学びから卒業後のキャリア、起業に込めた思いなどのお話を伺いました。

「見たい面」だけで判断しない―家近ゼミで学んだ多角的な視点

異なる文化を持つ人々が信頼関係を築くためには、言葉が通じるだけでなく、相手の歴史や価値観、行動の背景まで理解しようとする姿勢が欠かせません。家近亮子教授のゼミでは、現代中国や台湾の政治・歴史、東アジアの国際関係について研究し、中国本土と台湾の関係、日本との歴史的なつながりなど、身近でありながら複雑なテーマに向き合ったそうです。そこで身につけたのは、一つの国や立場から物事を判断するのではなく、複数の視点から考える姿勢でした。

 

「見たい面だけを見るのではなく、その背景にある多様性を理解することを学びました」

 

表面に現れている出来事だけでなく、そこに至るまでの歴史や社会の成り立ち、異なる立場の人々が抱える事情までを考えるという学びは、卒業後に国境を越えて働くうえで、様々な判断を支える土台となりました。郭さんは、「語学を身につけることだけが国際的な学びではありません」と話します。授業や研究に加え、日本人の学生との交流を通して、日本の文化や人間関係、考え方を日常の中で学んだ経験を、今の仕事にも生かされているそうです。

家近ゼミ(2019年撮影)

現地のやり方を尊重し、中国で築いた信頼関係

大学を卒業後、郭さんは日本企業の中国法人に就職しました。仕事を始めて直面したのは、日本と中国における商習慣や意思の伝え方、仕事の進め方の違いでした。中国出身であれば、中国のどこでもすぐに相手を理解できるわけではありません。広大な中国には約14億人が暮らし、地域によって言葉や文化、生活習慣、仕事に対する考え方も異なります。同じ中国人同士であっても、互いの背景を知ろうとしなければ、十分に理解し合うことはできないそうです。

 

「中国人同士だからといっても、どこでもすぐに通じ合えるわけではありません。地域によって言葉も習慣も異なります。だからこそ、相手の立場に立って考え、現地のやり方を理解することが大切です」

 

日本側が当たり前だと考える方法を、そのまま中国の現場に当てはめても、必ずしもうまくいくとは限りません。そこで郭さんが大切にしたのは、自分たちの考えを押しつけるのではなく、まず現地の事情や相手の考え方に耳を傾けることでした。

 

「相手の立場に立って物事を考え、自分の行動を変えられるようになりました。現地のやり方を尊重することが、早い段階で信頼関係を築くことにつながったと思います」

 

同じ言葉を話していても、その背景にある文化や価値観まで共有できているとは限りません。計画通りに進まない場面でも、違いを否定するのではなく、双方が納得できる方法を探ること。国際学部で身につけた多角的な視点は、ビジネスの現場で実践的な力へと変わっていきました。

取引先とメールのやり取りをする郭さん

人材と観光の現場で磨いたコミュニケーション力

中国での勤務を経て日本に戻った郭さんは、人材会社で新卒採用や海外からの人材の定着支援に携わりました。海外からの人材と、受け入れる側の企業との間には、表面上の会話だけでは見えにくい期待や認識のずれがあります。外国人に日本企業の考え方や職場文化を伝え、企業には外国人が抱える不安や文化的背景を説明するなど、郭さんは双方が歩み寄るための支援を行いました。

 

「大切にしたのは、どちらか一方だけに変化を求めないことです。それぞれの思いや事情を丁寧に聞き、認識の違いを整理することで、文化の壁による早期離職の防止に取り組みました。」

 

その後は、日本の観光分野のシンクタンクで、観光地域づくりや訪日外国人旅行者の受け入れ戦略に関わりました。観光客数や消費額などのデータは、地域の現状を知るための重要な手掛かりです。しかし、数字だけでは旅行者や地域事業者の本音までは分かりません。中国の企業での勤務、人材支援、観光地域づくり、どれも分野は異なりますが、いずれの仕事にも共通していたのは、異なる立場の人々の間に入り、互いの考えを理解できるようにするという役割でした。それぞれの立場の人の声に耳を傾け、合意を形成していくことの重要性を、郭さんはこれらの仕事を通して実感したそうです。

コロナ禍を転機に、日本の良い品を海外へ

郭さんが起業へ踏み出す大きな転機となったのが、コロナ禍です。人の移動が止まり、観光地や地域の事業者が大きな影響を受ける状況を目の当たりにした郭さんは、「旅行者が魅力ある地域を訪れられないときでも、役に立つ方法はないだろうか」と考えました。そこでたどり着いたのが、越境ECです。越境ECとは、インターネットを利用して国境を越えて商品を販売する仕組みです。

 

日本各地には、高い品質や独自の魅力を持ちながら、海外ではまだ十分に知られていない商品が数多くあります。一方、中国をはじめとする海外には、日本の商品を求める消費者がいます。郭さんは明澤健康研究所株式会社の代表取締役として、日本の地域産品と海外の消費者を結ぶ事業に取り組むことにしました。しかし、日本で評価されている商品を海外へ出せば、そのまま受け入れられるわけではありません。商品の見せ方、説明に使う言葉、価格、販売経路、顧客対応などを、現地の文化や生活習慣に合わせて考える必要があるからです。

 

「越境ECも、異文化理解の延長線上にある仕事だと思っています。相手の国や消費者を理解しなければ、事業として成り立たせることはできません」

 

日本の事業者が商品に込めた思いを海外へ伝えると同時に、現地の消費者から寄せられた反応や要望を日本側へ返す。その声を商品の改善や新たな展開に生かすことで、双方に価値が生まれる関係を築こうとしているそうです。

明澤健康研究所株式会社で取り扱っているサプリの一部

「三方よし」を軸に、誠意ある経営を

郭さんが仕事をするうえで大切にしている言葉は、「上善如水」「三方よし」「継続は力なり」です。

 

「上善如水」は、姿勢が低く、水のように状況に応じて柔軟に対応すること。
「三方よし」は、売り手と買い手だけでなく、社会にとってもよい仕事を考えること。
「継続は力なり」は、すぐに結果が出なくても努力を積み重ねることです。

 

それぞれの言葉は、郭さんがこれまでの仕事や人との出会いを通して学び、会社経営の中で大切にしている姿勢を表しています。代表取締役として社員や取引先と接する際にも、誠意を持って相手の話を聞くことを重視しているそうです。経営者が一方的に答えを示すのではなく、様々な意見を受け止め、状況に応じてよりよい方法を選ぶことの積み重ねが、長く続く信頼につながると考えています。

一方通行ではない「真の日中の架け橋」へ

最後に郭さんは、国際学部で学ぶ学生や、留学・海外で働くことを考えている高校生へ、次のようなメッセージを送りました。

 

「大学では、勉強だけでなく、海外の友人をたくさんつくってほしいと思います。人との交流を通して、日本以外の国の考え方や文化をしっかり理解することが大切です」

 

語学力は、国際的に活躍するための重要な力です。しかし、その言葉を使って相手と信頼関係を築くためには、文化や価値観の違いを知り、相手の立場に立って考えてみるという経験も欠かせません。その視点を生かし、企業での勤務から起業へと歩みを進めてきた郭さん。一方通行ではない「真の日中の架け橋」を目指して、これからも日本の地域と海外との新たな可能性を広げていってください!

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