国際学部4年のSさん(スリランカ出身)が、山武市役所に正規職員として採用されました。卒業を目前に控えた今、留学生として歩んできた大学生活を振り返りながら、地域への思いと将来への決意を語ってくれました。
Q1: 日本に来たきっかけを教えてください
私が日本に来たきっかけは、日本人のコスモス奨学金の支援者(里親型奨学制度)の方々との出会いです。私は中学1年生の頃から、日本人の里親さんより奨学金の支援をいただいていました。里親さんは英語も、私の母国語であるシンハラ語も話すことができなかったため、日本語で自分の「ありがとう」という気持ちを直接伝えたいと思い、勉強を始めました。
最初は簡単な挨拶から学び始めましたが、次第に日本語そのものに興味を持つようになりました。特に漢字の形や文字の美しさに魅力を感じ、日本語をもっと深く学びたいと思うようになりました。日本語を学ぶうちに、日本の文化や社会についても調べるようになり、気がつけば自然と日本という国が好きになっていました。そして、「いつか日本で学びたい」という思いが強くなり、留学を決意しました。
Q2:敬愛大学で学んだからこそ成長できたと思うことを教えてください
敬愛大学での学びは、私にとって「支えられながら成長する時間」でした。温かく、そして真剣に向き合ってくださる先生方の存在があったからこそ、ここまで成長できたのだと感じています。
特にゼミでの学びは、私の成長の土台となりました。入学してから継続して同じ先生のもとで学び続ける中で、少しずつ自分の考え方が変わり、視野が広がっていくのを実感しました。多くの本を読み、内容を深く考え、自分なりの意見をまとめて発表する経験を重ねることで、物事を多角的に捉える力が身につきました。本を読むたびに新しい視点に出会い、自分の世界が広がっていきました。そして、「考えること」の大切さと楽しさを知ることができました。今、自分の意見を持ち、それを言葉にして伝えられるようになったのは、ゼミでの積み重ねがあったからだと強く感じています。
次に、日本語教師を目指すための学びについてです。専門的な知識を体系的に学ぶことができ、理論と実践の両面から理解を深めることができました。授業を通して、日本語を教えることの奥深さと責任の重さを実感するとともに、自分の将来の目標がより明確になりました。この学びは、私にとって大きな自信につながっています。

日本語教員養成課程で日本語学校での教育実習
また、日本語だけでなく、英語の学習にも力を入れることができました。英語でのプレゼンテーションやコミュニケーション中心の授業に何度も挑戦し、最初は人前で話すことが怖く、緊張して声が震えることもありましたが、経験を重ねる中で、自分の考えを堂々と伝える力が身についていきました。英語力の向上だけでなく、「自分を表現する力」が育ったと感じています。
さらに、スピーチコンテストや大学祭などの課外活動も、私を大きく成長させてくれました。自国の料理を紹介したり、外部から来られた方々の前で発表したりする経験は、自分の殻を破る大きな一歩となりました。また、奨学金制度や学費免除制度などの支援体制も整っており、安心して学業に集中することができました。
卒業論文では、女性差別とフェミニズムについて研究しました。特に、ワリス・ディリーの自伝『Desert Flower』『Desert Dawn』を中心に、女性が置かれている社会的状況や、その中でどのように声を上げてきたのかを分析しました。
このテーマを選んだ理由は、自分自身が女性として生きていく中で感じてきた疑問や、母国スリランカにおける女性の立場について深く考えたいと思ったからです。研究を通して、差別は特定の国だけの問題ではなく、形を変えながら世界各地に存在していることを改めて実感しました。同時に、一人の女性が声を上げることで社会に変化をもたらす可能性があることも学びました。
敬愛大学での経験は、語学力の向上だけでなく、自信、多様性への理解、挑戦する勇気、そして自分の声を大切にする力を与えてくれました。ここで出会った人々との時間は、私にとって一生の財産です。

卒業研究発表会で報告するSさん
Q3: 成田国際高校でのアルバイトでは、どんな支援をしていますか?特に心掛けていたことも教えてください
成田国際高校では、日本語を母語としない生徒への学習支援を行っています。主に授業内容の補助や、日本語理解のサポートを担当しています。支援を行う中で心掛けていることは、生徒一人ひとりの背景や気持ちに寄り添うことです。言語の壁だけでなく、文化の違いによる不安や孤独を感じている生徒もいるため、安心して質問できる環境づくりを大切にしてきました。自分自身も留学生であるからこそ、相手の立場に立って考えることを意識しています。
Q4: 国家資格「登録日本語教員」を取ろうと思った理由を教えてください
日本語教師の資格を取得しようと思ったのは、日本語学習に苦労した自分の経験がきっかけです。言語を学ぶことの大変さと、その先にある喜びを実感したからこそ、同じように学ぶ人を支えたいと思うようになり、日本語を通して人と人をつなぐ存在になりたいと強く感じたからです。言葉はただの道具ではなく、その人の生活や心を支える大切なものだと学ぶ中で実感しました。
敬愛大学の「日本語教員養成課程」で学ぶ中、文法や指導法だけでなく、「相手の立場に立って考えること」の大切さを知りました。日本語には、日本文化や社会の考え方が深く関わっているため、外国人にとって分かりにくい部分も多くあります。その背景まで理解した上で伝えることが、本当に必要な支援なのだと学びました。
大学で得た学びは、私の夢である日本語教師という目標だけでなく、これからの仕事や地域社会の中でも生き続けていきます。日本語教員養成課程で培った「伝える力」と「寄り添う心」を大切にしながら、これからも多くの人の力になれる存在を目指していきたいと思っています。

日本語教員養成課程を統括する国際学部の長谷川准教授(右)と、同課程を修了し日本語教師として活躍する国際学部卒業生のH先生(スリーエイチ日本語学校、左)。卒業生であるH先生が、Sさんの実習指導教員を担当しました。
Q5: 山武市役所を志望した理由は何ですか?また、採用後どのような職員になりたいですか?
山武市役所を志望した理由は、山武市が私の人生を大きく変えてくれた町だからです。日本に留学したばかりの頃、日本語もまだ十分に分からず、不安を抱えながら生活を始めた私を、温かく受け入れ育ててくれたのが山武市でした。
地域でアルバイトを経験し、近所のおばあちゃんやおじいちゃんに声をかけていただいたり、自分から挨拶をしたりする中で、日本の生活のルールや文化、人と人とのつながりの大切さを学びました。言葉が十分でなくても、地域の方々が優しく接してくださったことは、今でも忘れられません。
数ある自治体の中で山武市を志望したのは、この町に恩返しがしたいという強い思いがあるからです。私が安心して成長することができたこの場所で、今度は支える側として働きたいと考えました。
これから山武市役所で働く中で、多くの外国人の方々と関わり、さまざまな説明や手続きを行う必要があります。そのとき、日本語教育で学んだ知識は必ず役立つと感じています。日本の制度やルールを説明する際にも、相手にとって分かりやすい言葉を選び、どのくらいの速さで、どのように話せば伝わるのかを考えながら対応していきたいと思っています。
また、山武市内には多くの外国籍の子供たちが生活しており、その子どもたちは日本の小学校や中学校に通っています。私は現在も毎週土曜日に日本語教室に通っていますが、これからは大学で身につけた知識と経験を生かし、その子どもたちに日本語を教える活動にも力を入れていきたいと考えています。日本語を学ぶことで、その子どもたちが安心して学校生活を送り、自分らしく未来を描けるよう支えていきたいです。
将来は、自身が支えられた経験を活かして、外国人市民と地域の方々が互いに理解し合い、安心して生活できる環境づくりに貢献したいと考えています。また、日本のルールや文化を丁寧に伝えながら、誰もが孤立しない地域づくりに取り組める職員になりたいと思っています。

2025年度、留学生日本語スピーチコンテストにてゲストスピーチ(2023年度最優秀賞受賞)
