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元高校球児が英検1級合格!オールイングリッシュの授業がやる気に火を付ける

国際学部 2年 T・Oさん

2024/12/17

英検1級は、国内で最難関と言われる英語資格試験の1つです。教養のあるネイティブ・スピーカーが使う語彙力とともに英語4技能「聞く・読む・話す・書く」のすべてを総合的に用いて、論理的に説明する力が求められる資格です。英語教員や帰国子女などを含む多くの人が挑戦しても合格率はわずか10%前後と言われています。そんな高難度の英検1級を、国際学部2年のOさんは、大学入学まで英語が特段得意ではなかったのにも関わらず、海外体験もない中、1回目の受験で見事合格を果たしました。合格の背景にはいったいどのような学習があったのでしょうか。英語教育が専門の国際学部の向後教授と聞きました。

部活動中心の高校時代と転機となった向後教授の授業

高校時代のOさんは県大会決勝まで進出するような強豪校の野球部に所属していたため、高校生活は部活動が中心でした。大変な練習の日々で、英語の授業中にはついうとうとと眠ってしまうことも。「”apple”の綴りが書けなくて、隣の席の女の子に笑われたこともありました」と当時を思い出して苦笑交じりに語りました。国際学部に進学したのは、「英語ができるようになれば将来、高い収入が期待できるから」というもので、英語は決して得意な科目でも好きな科目でもありませんでした。

 

入学後、転機となったのは向後教授の授業でした。Oさんは国際学部へ入学が決まった後、英検準2級を取得したものの、向後教授の授業には歯が立ちませんでした。向後教授の授業「College English」は全て英語で進行し、学生同士が主体的に英語でやり取りすることが求められます。入学直後は「英単語を1つ言ってコミュニケーションを取っているような状態でした」とOさんは振り返ります。全てが英語で進行するため、「これはまずい・・・」と不安になったそうです。そこで、「もっと勉強しないといけない」と英検準1級を目指して勉強をスタートしました。

飛び級で挑んだ英検準1級 高い目標設定を立ててプレッシャーをモチベーションへ

なぜ、英検2級を飛ばして準1級を目指したのでしょうか?当時、向後教授もその目標は高すぎるのではないかと感じたと言います。しかしOさんは、「目標は簡単には届かないところに設定しないと自分にプレッシャーをかけられない」と言います。両親に山形から千葉の大学に進学させてもらった以上、4年間を無駄にできないという思いから、プレッシャーをモチベーションに変えて英語学習に打ち込んできました。もともと野球をやっていた時には年2回しか休みがないほど、練習にのめり込んでいたOさん。やるからには徹底的に、反復練習で徐々に上達をめざすメンタルの強さを野球で培ってきました。

英単語帳50周!? 驚くべき反復学習の効果

Oさんは文法を学び直した後、英検準1級用の英単語帳とアプリを使い、まずは1周、わからなくても終わらせ、次に2周目、3周目と繰り返し、最終的には50周を達成。スピーキングについては、授業のほかにもオンライン英会話で外国人相手に実践することで実力を付けてきました。こうして1年生の終わりには、英検準1級を取得することができました。

 

向後教授は、1冊のテキストを繰り返し使用することは非常に理にかなった学習法であると言います。多くの学習者は様々なテキストに手を出しがちです。適切なレベルのテキストを何度も繰り返し学び直すことで、とっさの場面で活用できるぐらいに記憶を定着させたほうが良いのです。

英検1級用の参考書に刻まれる「正」の数が10個 同じテキストを50周した証

英検1級の壁

英検準1級を取得したOさんは、すぐに次の目標を1年以内に英検1級に合格することに定めました。大学で開講されている「TOEIC集中対策講座」を受けることで、2年の4月には905点に到達し、1年前期末からスコアを400点近く上げることができました。そのため少しだけ甘く見ていたと話すOさんですが、初めて1級の過去問題を見た時、「本当になんにもわからなくて、泣きそうになった」と驚愕したことを明かしてくれました。

実は、英検1級と準1級の間には大きな壁があります。英検1級では、社会問題や国際問題となっている事柄を、専門用語を用いながら論理立てて伝える力が必要になってきます。「日本語でも考えたことがないような問題が出題されるので、まずその考え方を日本語でも学んでいた」と、英語以外にも勉強の幅を広げていったそうです。

スピーキング能力の向上に役立った学習法とは

Oさんは英語のスピーキング練習にも変わった方法をとり入れています。向後教授のクラスでは英文を丸暗記してスピーチすることは禁止されており、あらかじめ話すテーマと概要だけを考え、即興で話す力が求められます。Oさんは参考書や例文集でよく使われるフレーズを数多く覚え、それらをスピーキングの中で自然に使えるように練習していました。向後教授は「借用したフレーズを使って発信することで、それが次第に自分の英語力として定着していきます。言葉の引き出しが増えることで、より豊かな表現が可能になるのです」とOさんの学習法を高く評価しています。

 

Oさんの成長を間近で見ていた向後教授もその成長の速さに驚きました。「1年の後半から2年の前半にかけて、スピーキング能力が驚異的に伸びていました。1年次のスピーキングテストでは、不必要な言葉が入ったり、表現に迷って止まったりしてしまうことがありましたが、それが2年生になるとほとんどなくなりました。クラスメイトの前で英語を話す経験を重ねることで場慣れも進み、洗練された表現が使えるようになっていったのでしょう。スピーキング能力は、知識として持っている語彙や表現を実際の場面でいかに使いこなせるかにかかっています。おそらく、借用したフレーズが自分の言葉として定着していった結果だと思います。」

周りの環境を英語だけに!イマージョン・ラーニング

英検1級の合格を目指して、Oさんは2年次の夏休みを計画的に活用しました。前半をアルバイトにあて、後半は徹底的に英語学習に集中。計画どおり実践し、「人生で一番勉強した」と振り返るほどの努力を重ねました。1日最低12時間、英語漬けの生活を送り、朝起きたら英単語を500語分周回し、その後も英語のYouTube動画を視聴するなど、日本語を完全に排除して生活全体を英語のトレーニングに費やしました。

 

向後教授はこの学習法を「イマージョン・ラーニング」であると解説します。「イマージョンとは、生活の手段そのものを英語に置き換えることです。大学の授業だけでなく、家庭や生活の中でも英語を取り入れることで、環境全体を英語の世界に近づけることができます。授業の90分間だけ英語に触れるのではなく、それ以外の時間もYouTubeなどで英語に浸る。こうして自分を英語環境に没入させることが重要なのです。」

Oさんはこうした多大な努力の結果、見事1級合格という大きな目標を達成するに至ったのです。

Oさんの合格までの軌跡を聴いて 向後教授の振り返り

向後教授は、Oさんのように現状から考える目標のレベルよりも「半歩上の目標設定」をすることが重要だと語ります。その目標を達成するためには、何を使って、どのように、どれくらいやるのかを具体的に学生に示す必要があると考えています。今回のOさんの話を聴いて、長期的な大きすぎる目標を掲げるのではなく、1年間を3分割または4分割し、それぞれの期間で小さな目標をクリアしていく「短期間の目標設定」が効果的ではないかと考えます。「モチベーションの維持」という点でも、短期間ごとの達成感が大きな意味を持つからです。

さらに、向後教授は「自分を律する強さを持つこと」の大切さにも触れます。計画を立てることは誰にでもできますが、それを実行する段階で多くの人が挫折してしまうため、やはり短期間の目標を複数設定し、着実に実行する力を養うことが重要だと強調します。

また、学生同士が刺激を与え合う環境を作ることも欠かせません。「Oさんもそうですが、いろんな学生がコミュニケーションを取り合うことでお互いに刺激を受け、切磋琢磨するような教室環境が理想だ」と述べ、今後もそういった教育環境の充実に力を入れていきたいと考えています。

「初めて”日本語”で向後先生と会話した」とOさん

向後教授の授業が良い刺激になった

向後教授の授業について、Oさんは「オールイングリッシュの環境が自分にとって本当に良い刺激になっている」と語ります。授業内では英語のみで進行するため、最初は戸惑いもありましたが、間違ったフレーズを使った時でも、向後教授が適切な表現に言い直してくれることで、正しい英語を自然と学ぶことができるそうです。「あ、そういう言い方をするんだ」と気づく瞬間が何度もあり、その都度、英語力が少しずつ鍛えられていくのを実感しています。さらに、授業にはフィリピン出身の学生も参加しており、多様な英語表現に触れる機会も増え「そういう言い回しもあるのか」といつも刺激を受けているそうです。向後教授の授業は、単に知識を詰め込むだけでなく、実践を通して英語で考え、英語で表現する力を養う絶好の環境となっています。

次の目標へ

「先日、国際的なイベントでスタッフのアルバイトをしていた際、外国の方が間違った日付のチケットを購入してしまい、トラブルが発生しました。意を決して英語で話しかけたところ、私の説明を理解してくれて、無事に案内することができたんです」とOさんは振り返ります。この経験は、英語を学び続けてきた中で「初めて自分の英語が人の役に立った瞬間」でした。

卒業後はワーキングホリデーで海外に行くことも視野に入れつつ、英語力を活かして通訳の仕事をしてみたいと語るOさん。今後もさらにスピーキング能力を磨き、TOEFL iBTで100点(ハーバード大学など海外の一流大学への留学が可能なレベル)以上を取得するという新たな目標に向かって走り出しています。

向後教授の授業について見てみよう!