冒頭で、千葉敬愛学園の三幣利夫理事長から開会の挨拶がありました。グローバル化と技術革新が急速に進む時代において、デジタル化の遅れを取り戻すことが日本にとって重要であると強調し、情報マネジメント学部の新設がより良い未来社会の創造を担う人材育成の一環であると述べました。
7月27日(土)にホテルグリーンタワー幕張にて、敬愛大学情報マネジメント研究会が主催するシンポジウム「デジタル時代の空港まちづくり」が開催されました。本シンポジウムは2025年度の情報マネジメント学部の新設を記念して行われ、大学や研究機関、航空会社、自治体など成田国際空港に関連する幅広い分野から多くの人々が集いました。
開会の挨拶
基調講演1: 成田国際空港の現状と未来
まず、成田国際空港株式会社の代表取締役社長である田村明比古氏による基調講演が行われました。成田国際空港の現状や将来の計画について、様々な資料やデータを用いてビジョンが共有されました。
1.成田国際空港の現状
成田国際空港の利用者数はコロナ禍から急速に回復し、現在はコロナ前の9割まで回復しているそうです。特に外国人利用者の割合が増加し、直近では73%に達しました。LCC※の発着回数もほぼコロナ前と同水準に回復しており、今後20年間でさらなる成長が予測されています。
※LCC:JetstarやPeachなど、低価格の運賃が特徴の航空会社。
2.成田国際空港の未来構想
成田国際空港は新たな滑走路の整備を進め、国家プロジェクトとしてその機能強化が図られています。また、空港周辺地域と一体となった発展を目指し、新貨物地区や旅客ターミナルの整備を進める計画も紹介されました。
3.デジタル化と持続可能な発展
バイオメトリクス※を活用したスムーズなチェックインや保安検査の導入、持続可能な航空燃料の提供を目指す新会社の設立など、デジタル化と環境への配慮についても紹介されました。また、空港が地域と一体となって発展するための施策として、地域住民との信頼関係の構築を重視し、空港がもたらすメリットを地域にも広げる取り組みを推進することが表明されました。
※バイオメトリクス:人間の身体的または行動的特徴を用いて個人認証する仕組み。
基調講演2: 新しい成田国際空港地域の構想策定・共有に向けて
続いては、筑波大学名誉教授であり一般財団法人国土技術研究センター・国土政策研究所の所長も務める石田東生氏による講演が行われました。
石田教授は、航空需要が2040年までに2019年の2倍に達する見込みであり、貨物需要も堅調に推移すると述べました。また、空港の整備や発展が国家戦略の一環として重要であることを強調し、フルサービスキャリア(FSC)※とローコストキャリア(LCC)※の差が縮小しつつある現状に触れ、乗り継ぎ市場の重要性についても説明しました。
※フルサービスキャリア(FSC):日本航空(JAL)や全日本空輸(ANA)などの航空会社。
※ローコストキャリア(LCC):JetstarやPeachなど、低価格の運賃が特徴の航空会社。
パネルディスカッション: 空港まちづくりの未来
第2部はパネルディスカッションです。敬愛大学特任教授であり情報マネジメント研究会会長の根本敏則教授がコーディネーターを務め、田村社長と石田教授に加えて、成田市副市長の福島眞司氏、株式会社NTTPCコミュニケーションズの南陽氏が参加しました。
論点1: 新しい成田国際空港はデジタルで効率化できるか?
冒頭で福島氏から、成田市の課題として道路ネットワークの現状が紹介されました。南氏からはデジタルツイン※技術の活用による交通トラフィックの分析や自然災害時の最適なナビゲーションの可能性が示唆されました。
田村社長は、成田国際空港のデジタル化が進むことで、利用者の利便性が大幅に向上する可能性があると述べました。デジタル技術を駆使した空港内の各種手続きの自動化が実現できれば、効率的な運営が期待できます。
※デジタルツイン:現実(物理)空間にある情報をIoTなどで集め、送信されたデータを元にサイバー(仮想)空間でそれを再現する技術。物理的なオブジェクトやシステムをデジタル上に正確に再現できる技術。
論点2: 空港関連産業イノベーションとは何か?
田村社長は、経済のグローバル化と越境ECの普及に伴い、貨物需要が増加すると述べ、成田空港の貨物取扱機能を向上させる必要性を強調しました。南氏は、デジタルツイン技術によるトラフィックデータのリアルタイム収集・分析が、交通管理の最適化や物流の効率化に寄与すると述べました。
※越境EC:電子商取引(EC:E-Commerce)において、国境を越えて取引を行うこと。
論点3: 空港まちづくりへの課題
田村社長は、コロナ禍からの回復に伴い、空港内外での雇用が増加していると述べ、雇用促進とデジタルによる自動化、省人化の重要性が強調されました。福島氏は、住みやすい街づくりのためには、子育てや医療施設の充実が不可欠であると指摘し、石田教授は、地域との連携や、国やNAA(成田国際空港株式会社)によるサポートが必要であると述べました。
質疑応答
質疑応答では、「2040年までに成田国際空港の貨物地区の整備がどの程度進むか」「リニア新幹線の成田国際空港までの延伸の需要」「バーチャルツーリズムとテーマパークの可能性」などについて参加者から質問が寄せられ、パネリストたちが回答しました。
閉会の挨拶
閉会の挨拶では、中山幸夫学長が本日の登壇者や参加者へ感謝の意を伝え、成田国際空港と周辺地域が共に持続的な発展を目指すことの重要性が強調されました。また、地域と共に歩む大学として、変化の激しい時代状況の中で、社会の動きに的確に対応し貢献できる、そうした人材育成の一翼を担うという決意を表明しました。
今回のシンポジウムは、成田国際空港と地域の未来を見据えた有意義な議論の場となりました。敬愛大学は地域社会との連携を深め、情報マネジメント学部の新設を通じて、デジタル化が進む未来社会の創造に寄与していきます。