6月25日にTBS(Tokyo Broadcasting System Television)報道局の井上洋一氏をゲスト講師としてお迎えし、国際学部の1年基礎演習の合同授業を開催しました。井上氏は新聞社の社会部でのキャリアを経てTBSに入社し、モスクワ支局長や北京支局長を歴任された経験を持つベテラン報道記者です。今回の講義では「TVの現場・ニュースができるまで」、「日本におけるメディアの歴史」、そして「国際報道の現場」という3つのテーマでお話しいただきました。
ニュースのできるまで
まず最初に、学生たちはTBSの報道局に密着したDVD「ニュースのできるまで」を視聴しました。DVDは、TBSテレビの報道局がニュース番組制作の裏側をとらえたもので、取材から放送までの一連の流れを詳細に紹介しています。同社のニュース制作にはおよそ1,000人が関わっているそうです。また、ニュースの報道に関しては全国28の系列放送局が連携しており、24時間365日放送できる体制が整っていることがわかりました。学生たちは、記者の取材から報道局でのチェック、映像編集、アナウンサーの準備まで、普段見ることのできないニュース現場の様子を興味深く視聴していました。
日本におけるメディアの歴史
続いて、日本におけるメディアの歴史です。天気予報や公共交通機関の運行状況など、登校時に様々なニュースをチェックすることが多い学生たちに対し、スマートフォンが普及する前のメディアの歴史と変遷を語られました。新聞、ラジオ、テレビ、そしてウェブの各時代ごとの特徴や進化について、具体的なエピソードを交えて解説されました。
新聞については、500年前の瓦版から始まり、戦時中の情報統制や敗戦後のGHQによるチェックを経て現在に至るまでの歴史が語られました。また、テレビの登場とその影響についても触れ、1953年に現在のNHKと日本テレビが放送を開始したこと、続いて1955年にはラジオ東京(現TBS)がテレビ放送を開始したことが紹介されました。さらに、1990年代からのインターネットや携帯電話の普及に伴うニュースサイトの拡大、スマートフォンやSNS市場の拡大による情報発信の変化についても言及されました。
国際報道の現場
最後に、自身のモスクワや北京、ペルー、中東での取材経験を振り返りながら、国際報道の現場に関するお話がありました。特に、1996年のペルー日本大使公邸人質事件や、北京での反日デモの取材における困難な状況を説明し、報道現場でのリアルなエピソードが紹介されました。長期にわたる海外取材の中で、言語の壁や治安の問題、衛生環境など、様々な困難に直面した経験から、多文化理解と国際教養を身につけることの重要性が強調されました。
同時に、外国語を学ぶことの大切さについても触れられました。異なる言語を学ぶことは、その国の人々の思想や価値観を深く理解することに繋がるそうです。まずは興味を持った外国語を1つ、勉強することから始めることが大切であると述べられ、外国語を学ぶことが多文化理解の第一歩であると伝えられました。
今回の合同ゼミでは、普段は触れることのできない報道の現場やメディアの歴史を学ぶ貴重な機会となりました。学生たちにとって大いに刺激となったことでしょう。報道に対する理解を深めるだけでなく、将来のキャリア選択にもヒントを与えるものとなりました。豊富な経験に基づく知識を共有してくださった井上氏に、心から感謝の意を伝えたいと思います。