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「インプロ・シンキング・ワークショップ」ー教育現場での総合的なコミュニケーション能力の向上を図るー

教育学部 教育学会講演会(FDワークショップ)

2023/11/21

「インプロ」を教育の場に

教育現場では、表現力や伝え合う力、臨機応変な思考力や判断力が必要とされます。そのような力を高めるために、「インプロ」を通して総合的なコミュニケーション能力の向上を目指す研修が、学校や企業の現場で多く取り入れられています。「インプロ」とは「即興」を意味する「improvisation(インプロヴィゼーション)」の略で、演劇や音楽、ダンスなど即興で行われるエンターテイメントを指します。

 

今回、学生たちが体験した「インプロ」は即興演劇です。台本や事前の打ち合わせなしに、参加者たちはその状況やお互いを受け入れ、想像しあいながら積極的に動き、ストーリーを作っていきます。株式会社インプロジャパンの峰松佳代氏を講師としてお迎えし、このインプロの考え方を日常生活に生かすための「インプロシンキング」プログラムを、教員や教育学部の学生が共に学びました。

株式会社インプロジャパン公認講師の峰松佳代氏(左)

「インプロ」は欧米ではすでに広く知られており、世界中でインプロショーやフェスティバルが行われているそうです。日本でも徐々に広がりを見せており、インプロチームの結成やインプロショーの数が増加傾向にあります。参加しているのはプロの俳優や表現者のみならず、その多くが会社員や教員、学生など一般の方々で、一部の大学では選択科目として取り入れられ始めているようです。

熱心に講義を聴く教員や学生

インプロ的子どもとの関わり

「インプロ」で学んだことは、教育現場でどのように生かすことができるでしょうか。本講座では「共に創造する関わり」がキーワードでした。「インプロ的子どもとの関わり」とは、常識に捉われず、目の前の子どもを受け入れ、前向きで建設的な関わりをすることで、子どもの可能性を引き出すということでした。「インプロ・ワークショップ」では、そのやり方を「教わる」受け身の姿勢ではなく、「自ら経験し、発見する」時間という説明があり、そこで得た気づきや発見を、教師になった時に活かしてほしいというアドバイスをいただき、ワークがスタートしました。

「インプロ」を実践する

まずはエクササイズで体を動かして緊張を解きほぐします。続いて、意思疎通を中心としたコミュニケーションの実践を行いました。

 

言った→聞いた→聞いたよ→聞いてくれたのね

 

といった「発信・受信・受信の確認・発信の確認」の流れのどこかが一つでも抜け落ちると、普段のコミュニケーションでもボタンの掛け違いが起きることが実感できました。

まずはエクササイズで緊張をほぐす

  • 相手と目を合わせてコミュニケーション

  • 名前を呼んで確認し合う

  • グループ間での協力の大切さがわかる

  • 会話のキャッチボールが重要!

 

続いては2、3人のグループに分かれたノンバーバルでの表現です。参加者はその都度、即興でポーズを取ったり、身振り手振りで演出をします。他のチームから見ても伝わるような演技が求められるので、どう表現すればよいか考える力や、それをメンバー同士で共有する力、反射神経など、様々な対応力が鍛えられそうです。

  • 思い思いに表現

  • 教員も学生も共に学ぶ

 

最後のワークショップは、これまでの集大成です。4、5名のグループに分かれ、物語を考えながら演技も行いました。頭と体をフルに使っての表現は、臨機応変な思考の切り替えが必要になります。

「岩を持ち上げる」表現をするチーム

  • 「泳ぐ」を表現するチーム

  • 「喜び」を表現するチーム

授業の進行やホームルームなど、教師は様々な場面で児童・生徒とコミュニケーションをとりながら学級運営をしていきます。今回のワークショップで参加者たちは、与えられたテーマに沿って臨機応変に動いていました。教育現場で子供たちと関わる際に意識しなければならない大切なコミュニケーションのポイントが、実践を通して学べるものだったようです。

VUCA時代に必要な「インプロ」の学び

インプロ・ワークショップは、何も決まっていないところから何かを作り出し、選択していくことの連続でした。即興で対応する力を身につけることは、VUCA(目まぐるしく変転し、予測困難なことを意味する)時代と言われている現代を生きるために必要です。未来は「白紙の台本」で、私たちは周囲の状況や変化を感じ取り、その瞬間での想像と選択の連続が物語や人生を作っていきます。「インプロ」の学びは、コミュニケーション能力だけでなく、新しいことを創造したり、課題解決のために動く力を養うことにも繋がりそうです。

 

教育学部の紹介 教員を目指す学生のためのサポート組織「教職センター」