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キラリ☆こども教育学科教員vol.3

国際学部 こども教育学科 畑中千晶教授

2018/02/14

今回、『男色を描く―西鶴のBLコミカライズとアジアの〈性〉』を執筆された(共編著)畑中教授に、お話しを伺うことができました。

1.今回、出版された『男色を描く―西鶴のBLコミカライズとアジアの〈性〉』について

日本の古典における男色の世界、二次創作、「萌え」の共振、そしてアジアにおけるBL解釈からLGBT事情まで、時代や国の中で変化していく、恋愛・性愛の多様性を探る1冊です。井原西鶴の『男色大鑑』(なんしょくおおかがみ)をBL(ボーイズ・ラブ)の視点からコミカライズした『男色大鑑-武士編-』『男色大鑑-歌舞伎若衆編-』『男色大鑑-無惨編-』(すべてKADOKAWA、2016年、畑中教授が解説を執筆しています)を発端に、コミカライズの世界、BL世界からのアプローチを取り上げ、様々な視点から新しい古典文学の可能性や問題を検討しています。

2.今回の『男色を描く―西鶴のBLコミカライズとアジアの〈性〉』出版のきっかけを教えてください

もともと、共著者の染谷智幸(そめや・ともゆき)先生とは「西鶴研究会」で共に研究をしており、古典文学の入口となるような書籍を出版する企画のお話もよくしておりました。その頃、私が解説を執筆し、すでに出版されていた三部作、『男色大鑑-武士編-』『男色大鑑-歌舞伎若衆編-』『男色大鑑-無惨編-』になかなかの反響があったことで、これを意識した内容のものを執筆してみようという流れになったことがきっかけです。
男色大鑑のBLコミカライズ版三部作の解説をした際、編集者の方より「江戸の文化に関心はあっても、原文を読むには敷居が高いと感じている人が読者層にあたる」と伺い、「漫画を執筆する作家の皆さんも当時の正確な情報を手に入れて描きたい気持ちがあるので、文献について教えてほしい」という依頼がありました。日本近世文学を研究している者として、新たに江戸の文化に興味を持ってくださる人が増えることはとても嬉しいことですし、その魅力が伝わるように工夫しました。このことは、「大学での授業で学生にどう興味を持ってもらうか」を考えることにもつながり、講義内容を考える上でも役立っています。そういった背景から、今回の書籍でも、面白さ、楽しさが伝わるように執筆しました。

3.本書の読者、江戸の文化・文学に興味を持っている方々にお伝えしたいことはありますか

研究者として、江戸時代の文化、江戸時代の文学をもっと知ってもらいたいと思います。本書でも触れていますが、性の多様性をおおらかに受け入れていく素地は、元来アジア文化の土壌に根づいていました。これまでの歴史および文化を知ることで自分の価値観の幅を広げ、人間の持っている可能性への認識を深めていってもらいたいと思います。
今回の著書をゼミでも紹介しましたが、ポジティブな興味を示してくれる学生が多いです。「古典」と聞くととっつきにくい、難しそうなイメージがあるかもしれませんが、言い方を現代風にアレンジすることで身近なものに感じてもらえているようです。現在ゼミでは「ポップカルチャーと古典」というテーマで研究をしている学生もおります。私はこども教育学科の教員ですので、小学校の現場における読書教育でも「好きなものから入る」ことの大切さを学んでほしいと思います。

4.今後の出版、研究についてを教えていただけますか

最近、若者の本離れや、文学離れが進んでいることに研究者として危機感を覚えます。文学研究の存在意義が改めて問われていると思います。今回の一連の執筆活動は、従来の文学研究になかった見方、掘り下げ方があることを知る良い機会になりました。古典文学をコミカライズするにあたり、イラストで表現するためには、これまで曖昧にされていた解釈や表現をもっと突き詰めて考えていく必要性があることもわかりました。また、現在日本の文化は海外からこれまで以上に注目されてきています。日本の古典文学研究を行っている海外の研究者も多数いますので、そういった研究者の方々と、海外の読者の目線を取り入れた研究や書籍の出版を行っていくと、新しいマーケットが開拓できるかもしれません。これからも、古典文学研究の新たな可能性を模索していきたいですね。

5.井原西鶴文学初心者の方におすすめの書籍はありますか?

つい最近出版された『気楽に江戸奇談!RE:STORY井原西鶴 』(笠間書院、2018年)がおすすめです。18歳以下の若い方々にも読みやすいような目線で西鶴の作品をわかりやすく現代語訳しています。私も『男色大鑑』の中の一編を担当しました。ぜひご一読ください。

畑中教授 著作、プロフィールなど

畑中千晶(はたなか・ちあき)
日本近世文学・比較文学が専門。
主な著書・論文『鏡にうつった西鶴 翻訳から新たな読みへ』(おうふう、2009年)、「西鶴が『男色大鑑』に登場するのはなぜか」(国文学研究資料館編『もう一つの日本文学史』勉誠出版、2016年)、『気楽に江戸奇談!RE:STORY井原西鶴』(笠間書院、2018年)など

2017年8月発売
『男色を描く―西鶴のBLコミカライズとアジアの〈性〉』
出版社:勉誠出版
著者(共編著):染谷智幸・畑中千晶(こども教育学科)
第二部「男色とアジア文化」には、「日本の文学」などの授業で
教鞭をとる坂東(丸尾)実子講師の関連記事も収録しています。
・座談会「タイとインドの男色文化、その多様性をめぐって」
ナムティップ・メータセート×ラージ・ラキ・セン×坂東(丸尾)実子×畑中千晶×染谷智幸
・〈鳥〉の文学―渇望される〈自由〉の時代的変化とLGBT文学
坂東(丸尾)実子

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