敬愛人

敬愛大学で輝く「人」「学び」を紹介

TEACHERS/STUDY/LABO

教員・学び・ゼミ

「旅行ビジネス論」ー旅行業界のこれまでとこれからを知るー

国際学部 国際学科 三浦 知子 教授

2023/06/22

「旅行ビジネス論」の授業は、旅行関連産業を将来の進路の選択肢の一つとしている多くの学生が履修しています。旅行産業の現状や仕組み、旅行商品、ビジネス特性、旅行市場等に関する基礎知識や専門知識が体系的に身につきます。6月12日に実施した授業では、大手旅行会社である近畿日本ツーリストの方をゲストスピーカーとしてお招きしました。主要な旅⾏会社のこれまでとこれからについてや、新たなビジネスモデルと戦略を詳しく紹介していただきました。

日本の旅行会社を知る

今回お招きしたのは、近畿⽇本ツーリスト株式会社 コーポレートビジネス⽀社の蛭間 雅人氏です。まず初めに、日本の主要な旅行業者の旅行取扱状況の資料を基に、その規模や取扱い額について説明していただきました。日本では現在、JTBグループが最も大規模な旅行会社であり、その次に近畿日本ツーリストの所属するKNT-CTホールディングス、日本旅行、東武トップツアーズ等が続きます。同ホールディングスの傘下には、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を担う株式会社KNビジネスクリエイトや、会議やイベントの運営を行う株式会社イベントアンドコンベンションハウス、介護や情報処理事業を行う企業などがあるそうです。国内・国外旅行の取扱に関連する企業だけでなく、その業種・業態は多岐にわたることがわかりました。

 

※企業が行っている一部の業務の企画・設計から実施までを、一括で外部に委託すること

近畿⽇本ツーリスト株式会社 コーポレートビジネス⽀社 部長 蛭間 雅⼈氏

旅行会社の業態、顧客層を知る

続いて、国内旅行会社である近畿日本ツーリストグループに所属している企業を例に挙げ、その業態や顧客層を紹介していただきました。例えば、クラブツーリズム株式会社は、Webなどのメディアを主体としたメディア販売型旅行会社と呼ばれる業態です。同社の販売する旅行を一度でも利用した人はリピーター用サイトに登録でき、そこでは趣味や共通の話題を基にしたサークル・コミュニティを作ることができるそうです。例えば、サッカーを共通の趣味としているコミュニティにはスポーツ観戦の旅行を販売するなど、顧客の興味関心に沿ったマーケティングを展開し、リピーターの囲い込みを行うといった戦略が展開されていることを知りました。さらに、近畿日本ツーリストの特徴ある取扱業務として、国際会議(G7広島サミット)や2020年の東京オリンピック、ワールドカップに関係した事例も紹介していただきました。また、最近の「推し活」ブームにより、ファンツアーと呼ばれる企画が増加しており、顧客の趣味活を応援するKNTエンタメと呼ばれる事業も好調なようです。コロナ禍によって受けた旅行業界の打撃は想像以上のものだったようですが、現在は順調な回復を見せていることがわかりました。

  • 蛭間氏を紹介する三浦知子教授

  • メモを取る学生たち

旅行のビジネスモデルの変遷

授業の中盤では、旅行会社の団体部門でのビジネスモデルの移り変わりを初期・中期・現在の3つに分けて説明いただきました。

 

 初期:旅行会社は旅行内容の手配代理店として、宿泊先や交通手段、食事施設、観光ガイド、添乗員などの手配の代行が中心
 中期:MICE(Meeting:会議(国際・国内)、総会、研修、セミナー、Incentive︓報奨旅⾏、招待旅⾏、⾒学旅⾏、Convention︓年次⼤会、学会、Exhibition︓展⽰会)の販売やイベントの販売を行うようになる
 現在:さらに新しい取り組みが加わる。代表例として、冒頭で紹介したBPO事業や、事務局業務(各種補助⾦、事業費の⽀給、運営⽀援)、誘客等のための戦略の企画・実⾏を担うプロモーション事業など

 

この他にも、顧客のニーズの調査・研究・分析や、会議の運営、コンテンツ作成(ホームページ、パンフレット等)など、従来の旅行業の枠にとらわれない、様々な事業を展開しているそうです。

今後の観光・旅行業界

観光・旅行業界を動かすと経済が動き、国が豊かになります。旅行業界は、観光によって交流人口・関係人口を拡大し、日本全体の経済活動を向上させるという大きな使命を担っているそうです。少子化によって停滞している地方経済ですが、多くの観光客を呼び込むことでまちを活性化できる可能性があります。ワーケーションやオンラインツアーなど、従来のビジネスモデルだけにとどまらない事業の展開を模索することになりましたが、大きな拡大には至っておらず、やはりリアルな旅行に勝るものはないと実感したそうです。

また、これからはSDGsを意識した観光活動が求められるため、サステイナブルな旅行プランは海外の富裕層からのニーズが高いそうです。17のゴールのうち、特に気候変動に対する対策が急務となっており、二酸化炭素の排出量削減や脱プラスチックの推進、フードロスへの取り組みなどについて積極的な検討がなされていることがわかりました。観光・旅行業界はいま、大きな変革の時期を迎えていると言えそうです。

学生からの様々な質問への回答

最後に、学生たちから事前に募った質問への回答をいただきました。蛭間氏にはたくさんの質問が寄せられており、観光・旅行業界への関心度の高さが伺えます。「資格や英語力は必要ですか?」という質問への回答では、海外からの観光客の誘致の重要性について触れ、大学生のうちに英語や第二外国語の勉強をしておくことの大切さを教えていただきました。「やりがいはどのようなことですか?」という質問への回答は、”多様な人々との出会いがあること”でした。政治家の方々や海外の要人との交流などについて、貴重な経験を交えながら語っていただきました。その他の多くの質問にも、大変丁寧にお答えいただきました。

多数寄せられた質問の一部

 

今回は、観光・旅行業の現場で活躍する方のリアルな体験談を通して、業界のこれまでとこれからについて理解を深める事ができた授業でした。国際学部には、旅行会社や航空、空港、鉄道、テーマパーク、ホテル、観光地振興など、観光産業分野で活躍したい人に最適な「観光マネジメントコース」があります。様々な視点から観光や旅行業についてを学び、将来の進路選択をより具体的なものにしていってください。

国際学部の紹介 敬愛大学 資料請求はこちら