敬愛大学の隣にある量子科学技術研究開発機構(量研)では量子科学を利用した革新的医療技術による治療と研究を行っています。6月15日(水)、教育学部の「科学教育論」(担当:小林准教授)を受講する学生たちが、最先端の放射線研究の現場から放射線教育のヒントを探すため、量研を訪問しました。
「放射線」は小学校理科で学習する範囲を超えていますが、福島第一原子力発電所の事故以降、風評被害や差別といった問題が起こり、小学生にも「放射線」をわかりやすく教える必要がでてきました。しかし、いったいどのように教えればよいのでしょうか?
重粒子線棟で巨大な加速器の内部を見学
一行が最初に見学したのは重粒子線によるがんの治療施設です。がんは日本人の死因第1位の病ですが、投薬治療や外科治療は身体への負担が大きく、高齢者には適用できない場合があります。放射線治療も選択肢の1つですが、より身体への負担が軽く、1日で治療を完了できる重粒子線治療に期待が寄せられています。重粒子線には「炭素イオン」を使用します。プラスの電気を帯びた炭素イオンを光速の7~8割まで加速させ、がん細胞の遺伝子を破壊します※。
今回は特別に”稼働中”のイオン源室(炭素原子から電子を取り除く施設)を見学させていただいたほか、線型加速器も窓から覗き見ることができました。
※ 重粒子線のエネルギーを調整することで、炭素イオンをがん細胞がある深さでピタリと止めることができる。止まった箇所でのみ細胞を破壊する力が強まるので、正常な組織への影響が少ない。
緊急被ばく医療施設で汚染検査を体験
次に、緊急被ばく医療施設を見学しました。ここは日本の放射線被ばく医療の中心を担う施設です。施設や設備の説明を受けた後、身体表面に放射性物質が付着した患者が運び込まれたことを想定し、放射性物質の汚染検査を体験しました。各種放射線を検出できるサーベイメーターを使って模擬患者の被ばく部位を検出したり、実際に全身から発せられる放射線を計測したり、本学学生のためにこれまでにない新しい体験プログラムをご用意いただきました。
「科学教育論」担当の小林 輝明准教授(教育学部)のコメント
自身の目で見て体験することで学生は視野を広げ、学びを深めていくことにつながると思います。今回の見学をもとに、学生たちは小学生に「放射線」についてわかりやすく伝えられる教材を考えていきます。どのようなアイディアが出てくるか大変楽しみです。今後も地域との連携を重要視し、量研と共同で教育活動を続けていきたいと考えています。
また、秋には施設の一般公開イベントを予定しているそうなので、興味のある方はぜひ参加してみてはいかがでしょうか。