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【教育学部】卒業研究発表会―4年間の学びを形にし、次の学びと実践に繋げる

教育学部 4年生

2026/02/09

2026年2月4日(水)、教育学部の4年生による卒業研究発表会が行われました。教育学部では、「4年次専門研究」(ゼミ)に加えて、「卒業研究」*に取り組みます。

 

伊坂教授(学部長)から、「これからの教員には、学び続ける姿勢が求められます。子どもたちの日々の表情や態度を観察し、自分の授業や学級運営に課題がないかを考え、研究マインドを持って改善を目指していってください。その出発点になるのが、今回の研究です」というメッセージが送られました。

* 2025年度の様子は、こちらをご覧ください。

主な研究発表

4つの会場に分かれ、約4時間にわたって研究成果の発表が行われました。各会場では、発表に耳を傾け、質疑応答で鋭い質問を発する学生の姿が見られました。以下の研究は、同時に行われた教育学会卒業論文コンテストで、最優秀賞と優秀を受賞しました。

「SCATを用いた女子サッカー部指導者の言葉かけの分析」 A. K.さん 【最優秀賞】

A. K.さんは、サッカー部での選手経験や、小・中学生や高校生への指導経験を通して、女子と男子では指導者の言葉かけの受け止め方が異なるのではないかという疑問を持ちました。

 

そこで、女子と男子の受け止め方の違いに着目し、指導の在り方について研究を進めました。高校サッカー部の指導者へのインタビューをもとに、SCAT*という分析手法を用いて、指導者の言葉の意味や意図を整理・分析しました。その結果、女子選手は言葉を音や雰囲気として受け取りやすく、声の強さに影響を受けやすい一方で、男子選手は言葉の意味を理解し、限界まで力を出そうとする傾向があると指導者が捉えていることが示されました。これらの結果から、相手の特性や状況に応じて言葉の伝え方を工夫することの重要性が示唆されました。

* SCAT(Steps for Coding and Theorization): インタビューなどの発言内容を段階的に整理し、意味や考え方を読み取る質的分析手法のこと。

審査委員の講評
女子選手が言葉を「音」として捉え、デコード(解釈)の障壁が生じるリスクに対し、指導者はトーンの微細な「形式の選択」を徹底することで、言葉を「内容」へと変換させているという分析が興味深い。根気強くインタビューの音声データを分析し、「塩梅(あんばい)」という概念を抽出した点は秀逸で、この概念は小学校の学級経営でも重要である。スポーツ指導のみならず、学校教育現場における効果的な支援の在り方に通じる知見を見出しているといえる。

「「やさしいコミュニケーション」を用いた学級での支援」 S. H.さん 【優秀賞】

S. H.さんは、外国人児童の増加に伴い、小学校の学級担任に求められる支援の在り方が重要な課題になっていると考えました。特に、「やさしい日本語」*と「やさしい英語」を組み合わせた「やさしいコミュニケーション」が、外国人児童の安心感や学習意欲を支える手段として有効であると考えました。

 

先行研究の整理に加え、複数の小学校での聞き取り調査や、学習支援ボランティア活動の観察を通して、学校現場で行われている支援の実態を分析しました。その結果、日本語とジェスチャーを組み合わせた関わりや、児童一人一人の背景に応じた柔軟な対応、楽しさを取り入れた学習活動が重要であることを示しました。さらに、小学校2年生の学級を想定し、学級担任として実践しやすい具体的な支援の方法を提案しました。

* 「やさしい日本語」: 文法や語彙をできるだけ簡単にし、短く分かりやすく伝えるための日本語の表現方法。

審査委員の講評
千葉県内の小学校における聞き取り調査および観察を整理したうえで、来日直後の外国人児童を受け持つことを想定した支援方法を示した点が優れている。学校現場ですぐに活用できる具体的な内容である。実態調査から得た課題を解決するための具体的支援の在り方を提案しているところがよい。今後の展望として、外国人児童だけでなく、すべての児童にとって分かりやすく安心できる学級づくりにもつながることを示している。

「外国にルーツを持つ児童生徒の教科の指導について―小学4年生算数科「面積」の指導から―」 H. K.さん 【優秀賞】

H. K.さんは、外国にルーツを持つ児童生徒が増加する中で、教科の学習を通して必要な日本語の力を育てることが重要であると考えました。特に、算数科は内容が難しく感じられやすい一方で、図形などの具体性のあるものを使うことで理解を助けやすい教科である点に着目しました。

 

そこで、小学校4年生の算数科「面積」の単元を対象に研究を進めていました。JSLカリキュラム*や先行事例の整理に加え、小学校での聞き取り調査を通して、学習意欲を保つことや児童の実態を把握することの大切さを明らかにしました。また、日本語指導と教科指導を組み合わせた授業モデルと指導案を提案しました。

* JSL(Japanese as a Second Language)カリキュラム: 日本語を母語としない児童生徒が、教科学習に必要な日本語を学ぶための指導の枠組み。

審査委員の講評
児童の実態、体験的活動、日本語の語彙指導が効果的に組み込まれている。実際に自身の指導記録を残し、その実践をもとに考察を加えていくことが望まれる。さらに、児童生徒の意欲を引き出す指導一般につながる可能性を見出しており、今後の現場での実践に期待できる。

そのほかの研究と「教育学部12の特徴」

学生たちが取り組んだ研究を「教育学部12の特徴」と照らし合わせると、本学部の学びのねらいと深く結びついていることが分かります。

 

外国人児童への支援やICT活用などの研究は、「現代的教育課題に対応」する学びとして、学級経営や子ども理解に関する研究は、「こども学」を基盤とした学びに位置づけられます。また、授業実践や教材開発に関する研究は、「アクティブ・ラーニング」や「地域の特性を活かした教育」に関連します。「教育学部12の特徴」がカリキョラムの説明にとどまらず、学生一人ひとりの中に具体的な形となって結実していることを示しています。

研究テーマ 主に対応する特徴
ディズニー映画『ズートピア』を教材とした多様性理解に関する授業の開発 2 最新の研究や教育課題に触れる課題探究科目
スマートフォン操作への没入度が歩きスマホの発生プロセスに与える影響について 2 最新の研究や教育課題に触れる課題探究科目
「あそぼうさい」を用いた防災教育 3 体験的に学べる授業
自然体験活動を活用した算数教材の開発 3 体験的に学べる授業
MBTIに基づく小学生の多様なタイプを尊重した学級経営の提案―100人の事例分析から― 4 「こども学」を拡充
友人からのいじり発言に対する認知の差異について 4 「こども学」を拡充
小学校教育における生成AIの活用の可能性と課題 6 現代的教育課題に対応
外国人保護者対応について ―『学校生活支援オリジナルマニュアル』の作成― 6 現代的教育課題に対応
学校教育と塾教育の互助について―公平性の視座から探る― 7 教育実習と学校ボランティア活動
良い学級経営を目指して 7 教育実習と学校ボランティア活動
児童が主体的に考える算数教材~ゲーミフィケーションに着目して~ 8 アクティブ・ラーニング
いじめについて学ぶための教員向け教材の構想―TRPGの手法を用いて― 8 アクティブ・ラーニング
千葉県の特色を生かした社会科の授業づくり―野田市の醤油工場を題材に― 10 地域の特性を活かした教育
船橋市の歩みを学ぶプログラム教材の開発~総合的な学習の時間で活用するための教材開発~ 10 地域の特性を活かした教育

まとめ

卒業研究は、教育学部での4年間の学びを踏まえ、自らの関心を問いとして整理し、考えを形にする機会です。研究によって得られた視点や経験は、教員としてだけでなく、社会の一員として様々な課題に向き合う際の基盤となるものです。卒業研究発表は、学生たちがそれぞれの立場や関心から問題を捉え直し、次の学びや実践へと繋げていく出発点となるものでした。

発表の様子

教育学部の紹介