教育学部では、2022年から演劇の手法を取り入れた授業に取り組んでいます。10月9日(木)の演劇ワークショップに続き「劇団うりんこ」の協力を得ながら、学生たちは舞台表現の基礎を学びつつ、演劇を創り上げてきました。
教員を目指す学生にとって、演劇は専門外の学びに映るかもしれません。しかし、教育現場では、言葉の内容だけでなく、声の強弱や間の取り方、視線や身体の動きといった要素が、子どもの理解や安心感に大きく影響します。演劇を通じて身に付ける表現力は、授業づくりや学級経営の場面でも生かされる力です。さらに、作品を創作する過程では、テーマを掘り下げ、構成を練り、伝え方を検討します。まさに、大学で学びや、社会での実践に欠かせない営みなのです。
10/9 敬愛大学教育学部の名物授業「演劇ワークショップ」がスタート
表現劇コンテストの様子
12月18日(木)、各クラスの予選を勝ち抜いた教育学部1・2年生の混合チーム6組が、表現劇コンテストの決勝に挑みました。今年のテーマは「多文化共生社会実現に向けて」です。
近年、外国にルーツを持つ児童生徒は増加しており、多様な背景を持つ人々とともに生きる社会は、すでに現実のものとなっています。一方で、文化や価値観の違いから生じる戸惑いや対立が、学校現場で課題となる場面も少なくありません。例えば、「学校におけるピアスの扱い」は、国や地域によって文化的な意味合いが大きく異なるテーマです。親から子へピアスを贈る習慣がある社会もあり、日本の校則を前提とした考え方とは必ずしも一致しません。
今回、学生たちには児童生徒にとって身近な事例を演劇作品として捉え直してもらいました。将来、教員として、あるいは社会人として直面する可能性の高いテーマであり、学生自身も体験したことがあるかもしれません。各チームは、こうした繊細で複雑な課題を、児童に分かりやすく伝えることを意識しながら演劇を創作しました。対象学年の発達段階を踏まえ、道徳科の導入教材としての活用を想定した表現となるよう工夫されていました。優勝チームには、今年も実際に小学校の道徳の授業で演じる機会が与えられます。
学生たちが創り上げた表現劇は、いずれも「多文化共生」というテーマを、児童の身近な学校生活に引き寄せて描いたものでした。「外国からの転校生」「同性の友人への恋」「他者の立場への入れ替わり」「ジェンダーで決められた好み」など、扱われた題材は多岐にわたります。
特徴的だったのは、正解を提示する物語ではなく、登場人物の揺れ動く気持ちや、すれ違い、気付きの過程そのものを丁寧に描いていた点です。言葉や説明に頼るだけでなく、動きや表情といった非言語表現を通して関係性の変化を伝える場面も見られました。観客を巻き込んだり、観客に問いを投げかけたり、ストーリーを分けて多層的に表現する構成もあり、作品ごとに色々な工夫が試みられていました。
劇団うりんこ 小原氏による総評
劇団うりんこの小原氏からは、「どの作品もテーマについて深く考えられており、非常にレベルが高い」「演劇として純粋に楽しめる完成度だった」との評価が寄せられました。一方で、さらに表現のレベルを高めるヒントも教えてくれました。小原氏は表現において「わかりやすさ」は必ずしも良いことばかりではないと言います。作り手が「こう受け取ってほしい」という意図で、言葉を厳選し、明確に伝えようとすればするほど、その表現から「曖昧さ」が失われていきます。すると、聞き手が自ら想像を膨らませ、表現を自分なりに解釈するための「余白」が消えてしまうのです。低学年の子供たちには分かりやすさが不可欠ですが、対象の年齢が上がるにつれ、あえて表現を曖昧に留め、観客に判断を委ねる「余白」が、作品の深みや面白さに繋がることがあるのです。
今回のコンテストは、演劇を通して表現力を磨くだけでなく、多様な価値観と向き合い、それを他者にどう伝えるかを考える学びの場となりました。
優勝チームの作品は、実際に小学校の道徳科の授業で演じられる予定です。学生たちが創り上げた物語は、子どもたち一人ひとりが「自分ならどう考えるか」を見つめるきっかけとなることでしょう。