教育現場でICT活用が進むなか、図工にも従来とは異なる新しい教育方法が取り入れられています。教育学部1年生の授業「図画工作科指導法」(担当:久保田美和 准教授)では、ICTを活用した図工の授業をテーマに、学生たちが授業案を練り上げてきました。12月12日(金)、いよいよ45分間の模擬授業に挑む日を迎えました。
この授業では、模擬授業を担当する「授業者」、児童として授業を受ける「児童役」、第三者の視点で授業を観察し評価する「観察者」に役割を分けて授業を進めます。今回、授業者を務めたのは男子学生4名、題材名は「形に命をふきこんで」です。スマートフォンアプリを利用し、被写体を少しずつ動かしながら1コマずつ撮影し、連続再生することでアニメーションを制作していきます。
1人1台タブレットを持つ環境が整う現在の小学校では、ICT機器を使った表現活動が行われるようになっています。学生自身が小学生だった頃には無かった活動ですので、将来教員として教室に立つ時のために、適切に指導できる力を身につけておく必要があります。
模擬授業の随所に工夫あり!

右:机間指導にあたる教員役 / 奥:授業の様子を評価する観察者 / 中央:制作する児童役2人
模擬授業が始まると、授業者がアプリの基本的な操作方法を動画を用いながら丁寧に説明しました。ICT機器を使う授業では操作に慣れない児童も想定しなければならないため、わかりやすい説明を工夫したことが伝わってきます。続いて、各班に「ウゴワード」と呼ばれるカードが配られました。このカードには「回転する」「変身する」など、作品の中で表現する動きが1つ指定されています。児童役の学生たちは、このウゴワードを制作の手がかりにして、どのようなアニメーションに仕上げるかを相談しながら作業に入りました。

授業の導入の様子

動きのキーワード「ウゴワード」をもとにアニメーションを作らせる
いざ制作に入ると、児童役の学生がアニメーション作りに没頭する様子が印象的でした。これは、授業者の指示が的確であり、2人1組で行わせたことで1人が被写体を動かし、もう1人が撮影するという分担が自然に生まれたことが要因です。また、ウゴワードで制作の方向性が定められていたことで、児童役の学生が悩まずに制作へ入り込むことができた点も大きいでしょう。

カラーペンを使って打ち上げ花火を表現したペア
実際のアニメーション
45分間、フルタイムの模擬授業の中にはいくつもの工夫が散りばめられていました。授業者の1人は「これまで他のグループの模擬授業を見てきて、教室全体に指示が行き届いていないことが課題だと思った。こちらの指示を聞き逃させないように工夫した」と言います。別の授業者も「ICT機器を使うので、予期せぬ事態により時間が足りなくなってしまうことが考えられた。児童を静かにさせ、話を聞かせることを徹底した」と説明しました。

制作のあとは…

お互いに作ったアニメを見せ合います
観察者と久保田准教授の講評
観察者役の学生からは、「授業者が児童の視線を前に向けさせた上で説明を行っていたため、内容が明確に伝わっていた」という評価が寄せられました。同時に、残りの制作時間の表示が見られなくなってしまったことや動画の説明の表示が小さかったことなど、次の模擬授業に生かせる点も指摘され、良い振り返りの機会となりました。
全体の講評として、久保田准教授は授業の号令から児童役を落ち着かせ、集中できる雰囲気を作れていた点を評価しました。2人1組での制作方法が今回の活動には適しており、扱う題材によっては人数構成を柔軟に変える必要があることにも触れました。久保田准教授は「この授業はよく練られており、今後、指導案を見返せるようにぜひ保存しておいてほしい」と大いに評価しました。
模擬授業を行った学生たちは、デジタル表現が広がる現在の図工に触れることで、ICT機器を活用した授業づくりの手応えを確かにつかんでいました。児童役として参加した学生も、デジタル表現ならではの楽しさを体験し、その魅力を将来受け持つ児童へ伝えてくれることでしょう。

代表して講評を述べる学生

まるでベテラン教員のように号令の指示を出す学生
