最初に訪れたのは成東駅前にある歌碑です。
「久々に家帰り見て故さとの今見る目には岡も河もよし」
左千夫43歳の作です。帰省し成東駅に降り立ち故郷を懐かしむ左千夫の思いが伝わってきます。 ※旧字体を新字体に改めて引用。以降同様

成東駅前にある歌碑
5月31日に山武市ゆかりの文学者、伊藤左千夫の歌碑を巡る文学散歩を行いました。参加者は「学級担任と読書」の受講生です。それぞれの歌碑では学生が解説役を担い、左千夫の生涯や当時の社会的背景を踏まえた解説を行い、歌碑に込められた左千夫の思いを深く掘り下げました。また、今回の文学散歩では、小学校高学年児童を読者として想定した『左千夫ハンドブック』を作成するという演習にも取り組みました。
最初に訪れたのは成東駅前にある歌碑です。
「久々に家帰り見て故さとの今見る目には岡も河もよし」
左千夫43歳の作です。帰省し成東駅に降り立ち故郷を懐かしむ左千夫の思いが伝わってきます。 ※旧字体を新字体に改めて引用。以降同様
成東駅前にある歌碑
旧成東町の花は「野菊」
橋の親柱の向こうに見える波切不動の赤いお堂 橋の親柱にも歌が
成東駅から波切不動に向かう道の途中、「野菊」のタイルがはめ込んでありました。旧成東町の町花が野菊となったのは、小説「野菊の墓」にちなんでのことでしょう。なお旧成東町は2006年の市町村合併で山武市となりました。また、橋の親柱に左千夫の歌が刻まれていました。そこから橋の向こうに見える赤いお堂が波切不動尊です。
石塚山の中腹に左千夫の歌碑があります。しかし、山頂の赤いお堂に気を取られていると、歌碑の存在には気が付かないかもしれません。
「石塚の岩辺の桜ひた枝に苔むすなべに振りさびにけり」
左千夫43歳の作。今は満開だが散りゆく桜と、長年にわたり枝や幹に生(む)している苔の、存在(命)の対比、色の対比が見事です。しかし、「ひた枝」「苔むすなべに」「振りさび」といった表現が小学生にはやや難解です。
波切不動尊にある歌碑
伊藤左千夫記念公園にある政夫と民子の像
伊藤左千夫記念公園にある文学碑
左千夫生誕の地である山武市では左千夫の業績が記念公園として残されています。小説「野菊の墓」(43歳の時「ホトトギス」に発表)の文学碑は作品の舞台になった松戸市矢切にあるものがよく知られていますが、この公園の中心には「野菊の墓」で政夫と民子がお互いの気持ちを吐露している像が置かれていると、担当学生が説明しています。その他にも左千夫や正岡子規などのアララギ派八歌人の歌碑や、左千夫の文学碑もがあります。
一行は山武市歴史民俗資料館にたどり着きました。ここの2階には左千夫の遺品や遺墨が展示されていて、左千夫の人生が概観できます。館内が撮影禁止でお見せできないのが残念です。
この資料館の横に左千夫の生家があります。そこには「牛飼の歌」として知られている左千夫の代表歌の歌碑があります。高さは2メートルを超す立派な歌碑です。
「牛飼が歌詠む時に世の中のあたらしき歌大いに起る」
子規に学び、茂吉に受け継がれた左千夫の志が端的に表現された歌だと思います。制作年月日不明とのことです。
伊藤左千夫の生家の前にある歌碑
今回の文学散歩を通して、受講生はどんなことを学んだのでしょうか。感想の一部を紹介します。
地元の成東小学校の3年生は郷土学習の一環で山武市歴史民俗資料館を訪れるようです。教職を目指す学生として地域の文化に関心をもち、地域の歌碑や資料館、博物館、美術館などを訪れて楽しめたらいいですね。