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体験なくして図工の授業は作れない! ~教育学部生が学ぶ図工の本質~

教育学部 准教授 久保田 美和

2025/06/05

教育学部の1年生の授業「小学校図画工作」(担当:久保田准教授)では、5月27日(火)、学生たちが「造形遊び」をしました。造形遊びは、与えられた空間と素材を出発点として自由に発想を膨らませ、心に描いたイメージを一から具現化していく、まさに創作の根幹となる活動です。今回は敬愛アリーナの広い空間で円盤型の厚紙を素材に、学生たちが思い思いに作品を作りました。

 

円盤型の厚紙は「ビルダーカード」という教材で、均等に8つの切れ込みが入っています。切れ込みをお互いに差し込むことで、大きく複雑な構造を組み上げることができます。工具や接着剤を使わないため、小学校の図工の授業で扱いやすい教材です。組み立ててみてはその形に悩み、分解してまた新たな形をつくるという試行錯誤の過程を体験することができるのです。

  • まずは手探りで組み立てていく

  • それは無理がありそう…

自分が体験した喜びや感動を授業作りに活かす

今回の授業は学ぶというよりも学生たちに童心に返って楽しんでもらうための授業です。いつもは真剣に授業に向き合う学生たちも今日ばかりは全力で楽しみます。「自分が体験した喜びや感動を児童に追体験させてあげることが図工の指導では大切」と語るのは、授業を担当した久保田准教授です。図工の授業は主要5教科とは異なり、教員自身が体験したことがないと指導が難しい教科です。制作の中で感じた困難や達成感、イメージを形にする喜びを学生に感じ取ってもらうことが、この授業の目的なのです。

 

千葉県立美術館の提供で一人一人に段ボール一箱分のビルダーカードが配られました。学生たちにはこれをすべて使い切るようにダイナミックに活動してもらいます。大量の素材を前に、学生たちは手探りで形を作っていきました。ビルダーカードは単純につなげることができる一方で、高く積み上げていくにつれて構造が不安定になるため、安定した土台づくりや支えの工夫が欠かせません。近くの友人の組み立て方を参考にしながら、どうすれば崩れずにより高く積み上げることができるかを互いに学び合っていきました。時には友人に構造を支えてもらいながら作っていくため、コミュニケーションを学ぶ授業として学活や道徳の授業でも活用できそうです。実際に、今回の授業で初めて話す学生同士もおり、協力していくうちに友人関係が築けたようです。

  • 教育学部の久保田 美和 准教授

  • 友達と協力して橋を作る

個人の作品作りから集団の共同作品へ

授業が中盤に差し掛かった頃、学生一人一人がある程度作り上げたところで、それぞれの作品が自然と結びつき、1つの巨大な立体作品へと発展していきました。実はこれもビルダーカードが持つ特性の1つであり、久保田准教授が意図していた展開でもありました。安定性を増した構造物はついに人の背丈では届かないほどに成長。脚立を持ち出してさらにその上を目指しているグループもありました。最終的には、隣り合った複数の学生たちによって、大きな飛行機や都会のビル群、宮殿を思わせるような作品が完成し、アリーナ全体が展示会場のような光景となりました。

  • 複数の構造が合体してビル群に

  • 脚立を使って高さにチャレンジする学生

今回の授業で学生たちは、造形遊びには「イメージを形にすることの喜び」「工夫することの楽しさ」「他者と協働することの温かさ」があることを、体験を通じて学ぶことができました。味わった創造の喜びを、将来、児童たちにどのように伝えていくのか――造形遊びは、その授業作りの第一歩となったのではないでしょうか。

バイクを作っていたら飛行機になっていた

教育学部のオープンキャンパス 図工の体験授業は8月3日(日)!