12月19日、国際学部の「空港ビジネス」(織井啓介教授)と「航空物流論」(柴田良夫講師)の合同授業を実施し、一般社団法人空港グランドハンドリング協会(AGHA)と会員企業4社の皆様にご講義いただきました。空港運営において重要な役割を担うグランドハンドリング業務(旅客ハンドリング、ランプ・貨物ハンドリングなど)への理解を深めることを目的としたものです。就職活動をスタートさせている3年生を中心に皆真剣に聴講しました。
空港グランドハンドリング協会の紹介
講義は、空港グランドハンドリング協会の代表理事・副会長の宍倉幸雄氏(株式会社JALグランドサービス代表取締役会長)による挨拶から始まりました。同協会は2023年8月に設立されたばかりの新しい組織ですが、空港グランドハンドリングに関連する日本全国の企業約400社のうちすでに100社以上が加盟しており、業界の発展と人材育成に取り組んでいます。宍倉氏は学生たちに「気づき」の大切さを強調し、日々の授業の中で、普段と違う視点や新たな発見を得ることの重要性を呼びかけました。
グランドハンドリングとは?
続いて、同協会事務局の奥村亮介氏から「グランドハンドリング」※についての説明がありました。飛行機の着陸から離陸までに行われる地上業務を指すグランドハンドリングは、航空機の運航を安全かつ時間通りに行うための重要な役割を担っています。空港を利用する人々と直接関わる業務(旅客ハンドリング業務)もありますが、荷物の積み降ろしや管理、航空機の誘導など(ランプ・貨物ハンドリング業務)を通じて、安全で快適な空の旅を支える「縁の下の力持ち」としての使命もあり、その内容は多岐にわたることが紹介されました。
(※空港地上支援業務(狭義のグランドハンドリング業務)に特定地上職(いわゆるグランドスタッフ)などを含めた広義のグランドハンドリング業務です)
各企業からの業務紹介
続いて、成田国際空港でグランドハンドリング業務に携わる4社の企業の皆様から、具体的な業務内容を紹介いただきました。
①ランプハンドリング業務:株式会社JALグランドサービス
JALグランドサービス(JGS)企画部生産計画グループ係長の安田秀明氏からは、グランドハンドリング業務全体の紹介ののち、主にランプハンドリング業務についての説明がありました。貨物スペースへの手荷物や貨物の積み降ろしを行う業務で、専用車両の操作を含む職人技が求められる仕事です。また、バックオフィスでの業務や働き方改革に向けた最先端技術の導入も紹介されました。リモコン航空機牽引車や遠隔操作車両など、生産性向上や省力化を目指した取り組みが現場で進められていることが具体例を交えて語られました。
②旅客ハンドリング業務:株式会社シンプティア
シンプティア(Simptier)旅客部片岡朱美氏からは、旅客サービス業務について説明がありました。1日のスケジュール(カウンター業務、ゲート業務、到着業務、サポート業務)を学生に共有していただきながら、空港カウンターでの搭乗手続きや手荷物の預け入れ、特別なサポートが必要なお客様への対応など、グランドスタッフの皆さんの業務の流れが紹介されました。限られた時間内での業務遂行には、時間管理が重要となります。お客様だけでなく、スタッフ同士の積極的なコミュニケーションも不可欠であることが強調されました。
③貨物ハンドリング業務:国際空港上屋株式会社
国際空港上屋(IACT)総務部の川上慎太郎氏からは、航空貨物の取り扱いに関する業務が紹介されました。日本一の貨物取扱量を誇る成田国際空港内には、東京ドーム4個分(8万3000㎡)の大規模な貨物取扱地区があります。この地区にある倉庫内の様子や、実際に貨物が搭載される航空機内のスペースなど、貴重な写真を交えながら貨物の流通プロセスが説明されました。輸出入貨物の流れやチェック、保管業務など、国内外の物流を支える要としての役割を担っており、航空物流の重要性が学生たちに伝えられました。
④オペレーション業務:全日本空輸株式会社
全日本空輸(ANA)オペレーションセンターの仲本奈央氏からは、航空会社オペレーションマネジメント部の4つの業務についてご説明いただきました。スポットコントロール業務は、出発便・到着便が使用するスポットの調整(便の遅延やイレギュラーなど)を担当します。ハンドリングコントロール業務は飛行機が到着してから出発するまでの整備、給油、清掃、ケータリング、搭載などを管理します。ロードコントロール業務は乗客・手荷物・貨物の重量を管理し航空機のバランスを安全に保ちます。運航支援業務(ディスパッチャー等)は飛行中に予想される揺れの情報やお客様や空港情報をパイロットに提供しています。飛行機の運航に欠かせないこれらのオペレーション業務をしっかり理解しました。
協会ならびに4社の皆さんは、授業終了後も30分ほど授業会場に残ってくださり、3年生を中心に学生からの活発な質問や相談に対応いただきました。
参加した学生からの感想
- 実際に空港の現場で働いておられる皆さんのお話が伺えてたいへん勉強になった。世界とつながっている感覚が持てた。就活に向けて役立った。(3年生)
- 1回の授業の中で一度に4つもの企業のお話が伺えてよかった。表に出ない業務でも「縁の下の力持ち」的な役割がありとても魅力的に感じた。(2年生)
- 成田空港の近くに住み、空港でアルバイトをしているが、飛行機を一機飛ばすのにも様々な職の方々が関わり、大変苦労しているのを知り驚いた。(1年生)
今回の特別授業は、空港のさまざまな現場で活躍するプロフェッショナルの皆様から直接お話を伺う貴重な機会となり、学生たちは空港業務の多様性や重要性を深く理解する場となりました。同時に空港スタッフを目指すモチベーションも大きく上がりました。なお、2025年1月に本学は空港グランドハンドリング協会の賛助会員に加えていただく予定です。国際学部では学生の皆さんのキャリア形成に資するような教育活動を今後も展開していきます。