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竹園高校英語科教員が向後教授の英語授業を視察 ~実践的コミュニケーション重視の教育手法に注目~

国際学部 教授 向後 秀明

2024/12/03

国際学部の向後秀明教授は千葉県の公立高校の英語科教員を経て文部科学省で学習指導要領を改訂するなど、日本の英語教育改革を進めてきました。現在は、全国の小・中・高・大の教員に向けて英語の指導法を教えるなど、Teacher’s teacherとして活躍しています。

11月28日(木)、向後教授がアドバイザーを務める茨城県立竹園高等学校の英語科教諭5名が来学し、向後教授が担当するCollege English ⅡとCollege English Ⅳの授業の様子を視察しました。竹園高校は茨城県内トップレベルの進学校で、各界で活躍している人材をこれまで多数輩出しています。

 

向後教授の授業はすべて英語で行われ、休み時間の雑談からすべて英語で学生とコミュニケーションをとっていました。すべて英語で授業を進めるためには、学期の最初の授業が最も重要だと向後教授は指摘します。日本語を少しでも使用すると学生に悪い意味で安心感を与えてしまい、英語上達に必要な適度な緊張感をもちづらくなります。授業中の指示が理解できない場合でも、教員からの直接的なサポートは最小限に抑え、学生同士の助け合いを促します。これにより、自然な形で学生間の関係構築が進み、クラス全体の英語コミュニケーション能力が向上していきます。

授業中の冗談も英語で

授業は、ペアに分かれてのスピーキングとリスニングのウォームアップから始まりました。このペアもランダムに向後教授が決めており、毎回違った相手と組むことになります。ペアの片方がテーマに沿って話し、もう片方はその内容を聞き取り、相手が話したことを1人ずつ発表していきます。その発表に対し、向後教授が質問をしたり会話を膨らませたりしていきます。時々、学生が文法を間違えてしまいますが、向後教授はさりげなく正しい表現に言い直す「リキャスト」という手法を用いています。学生の誤りはクラス全体の学びのチャンスとして感謝の気持ちでとらえ、学生の学修意欲を損なわないようにしています。リキャストは1回やったから効果があるのではなく、日常的にサポートしながら、少しずつ気付きを促していくのが望ましいと言います。

向後教授は「外国語の授業では100%理解することは必要ない」という考えのもと、部分的な理解でも許容する柔軟な姿勢を取っています。コミュニケーションをとることが大事であって、英文学を深く読み取るわけでも翻訳家のような正確さを目指すわけでもないからです。

次に行われたのが、指名された学生によるスピーチです。学生は緊張せず慣れた様子で淡々と話していました。学生のスピーチ内容から授業が展開していき、学生たちに次々と話を振っていき、話を広げていきます。このように、向後教授の「College English」では授業の多くの時間をリスニングとスピーキングに充てています。社会で即戦力となるにはこの2つの技能が特に重要だからです。

授業では前後期6回ずつ程度、計12回程度のスピーキングテストを実施しています。テストでは、メモや原稿を使用せず即興での発話を求め、実践的なコミュニケーション能力を評価します。暗記した原稿での発表は、実践的なコミュニケーション能力の向上には繋がらないという考えがあるからです。頻繁にスピーキングテストを行うことで、学生も人前で話すことに慣れ、自信をもって英語を話すようになるそうです。

学生全員の前でスピーチする学生

授業後、竹園高校の先生たちと英語教育について話し合う

竹園高校の先生たちは、向後教授の授業から多くの示唆を得たようです。特に印象的だったと話していたのは、プリントやワークシートに頼らない授業展開です。先生たちは「プリントを作ったり、スライドを作ったりと、親切にしすぎているかもしれない」と振り返ります。「英語コミュニケーション」という授業にもかかわらず、コミュニケーションを中心にした授業になっておらず、いつでも細部までの完全な理解を求めてしまう姿勢を見直す必要があると感じたようです。

授業でのコミュニケーションの質にも竹園高校の先生たちの注目が集まりました。学生たちは同じ話題を繰り返し扱う中でも集中力を保ち、積極的に参加していました。これは、英語を学ぶことそのものではなく、英語を使って何かを学び、考えるという学習意識が育まれているためではないかと評価していました。

リキャストの活用も高く評価されました。竹園高校の先生たちは「リキャストの多さは私たちにはないところ」とし、学生の発話を促進しつつ修正する向後教授の技術に驚いていました。また、リスニング指導の方法についても新たな気付きがあったようです。向後教授は、リスニングの際にメモを取らせないようにしています。通常の会話程度の長さではメモを取る必要はなく、即座に返答できるようにする必要があるからです。従来の「聞いて、メモを取る」という方法から、より自然なコミュニケーションを重視した指導法への可能性を見出していました。

授業後、向後教授の授業方法について質問する竹園高校の先生たち

国際学部は英語が苦手な方にもおすすめ

最後に、向後教授は次のように話してくれました。「学生たちは敬愛大学に入ってから、授業内外で英語に触れ、実際に英語を使う機会を圧倒的に増やし、着実に総合的な英語力を伸ばしています。私が一番嬉しいのは、高校時代に英語が苦手であった(不得意であった)という学生を含め、みんなが笑顔で楽しそうに英語を使ってやり取りしている姿です。英語に苦手意識を持っている学生こそ本学に来て、英語を学ぶことの楽しさを実感していただきたいと思っています。」

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