プラド美術館に行ったあとは、本場のフラメンコを見ました。フラメンコショーが行われるタブラオ(Tablao)と呼ばれる場所に入ると、ステージがよく見える正面の席に案内されました。南部アンダルシア地方の情感に満ちた踊りは、思っていたフラメンコとは違いましたがすごかったです。踊りのタップが自分たちの座っているところまで響いてくる、大迫力のフラメンコでした。その後は、みんなが食べたいと言っていたチョコにつけて食べるチュロス(Churros con Chocolate)を食べたり、グランビア(Gran Vía)にあるZARAとH&Mで買い物をしたり、ぶらぶらと夕暮れの繁華街を歩いてからホテルに帰りました。帰宿後近くのレストランでスペイン料理をお腹いっぱい食べました。特にアヒージョや生ハム、トマトペーストを塗って食べるパンPan con Tomateが絶品でした。
4日目、学生たちは朝から新たな発見の旅に胸を膨らませていました。この日からは、スペインが誇る芸術と文化を体感する学びの日々です。歴史ある建築物や美術館、名所を巡りながら、異国の美意識に触れる旅が始まります。
4日目 ガウディの傑作を巡る
特急に乗ってバルセロナへ
夜明け前にホテルを出発し、イリョ(iryo)という新幹線のような高速列車に乗って、マドリードからバルセロナに行きました。バルセロナは、地中海に面し、アントニ・ガウディとそのモダニズム建築で有名なスペイン第2の都市です。マドリードからバルセロナへまでは特急列車を利用すると2時間30分で、距離は504kmです。列車の中では、たくさんの外国人がずっとおしゃべりを続けていて楽しそうでした。窓からの風景は、メセタ・セントラル(Meseta Central)と呼ばれる黄土色の乾いた大地が延々と続きます。雨が少なく乾燥した大地に強い日差しが照り付けるため、川辺を除いて大きな木は育ちにくく、低木や荒れた草地ばかりです。途中風力発電用の風車がたくさん見られました。
カサ・ミラ(Casa Milà)とカサ・バトリョ(Casa Batllo)
昼前にバルセロナのサンツ駅(Estación de Barcelona Sants)に着くと、そこからタクシーに分乗してサグラダファミリアへ行く途中、カサ・ミラとカサ・バトリョを見学しました。どちらもガウディの傑作で、時間の関係で中に入ることはできませんでしたが、目が吸い寄せられるほど美しい作品でした。カサ・ミラは直線の部分がまったく存在しない建造物になっていて、非常に印象的な建物です。地中海をイメージして外観の波打つ曲線を、ガウディは設計したそうです。 カサ・ミラはカサ・バトリョと比べて色がないものの、曲線が特徴的で、まるで建物自体が動いているような感覚でした。 また、カサ・バトリョはカラフルな色合いがとても印象的で太陽に当たるとタイルで装飾された部分が一層綺麗に見えました。
サグラダファミリア(Sagrada Família)
スペインの世界遺産サグラダファミリアは、ガウディの未完の傑作として知られています。まず建物の大きさと彫刻の繊細さに圧倒されました。彫刻一つ一つのデザインの意味を考察しながら鑑賞することがとても楽しかったのですが、目にする風景は写真や言葉では伝えられません。教会の内部に入ると、一面のステンドグラスで、それが光の入り方で見え方が変わり、美しく幻想的な気持ちになりました。エレベーターで塔の上まで登ることができ、上空からはバルセロナの街並みを見渡せました。遠くに地中海が光を受けてキラキラと輝き、空の青さと一体化して美しい眺めでした。当時のガウディが思い描いた建物が2026年に完成するのがすごく楽しみで、いつかもう一度ここに足を運びたいと思いました。
グエル公園(Park Güell)
グエル公園はガウディの才能がすべて発揮されているといっても過言ではないほど、公園全体がまさに1つの美術館ともいえる建築作品で、世界遺産に認定されています。ここグエル公園までは再びタクシーで行きました。離れた位置にある3つの入り口それぞれで降車することになってしまい、集合ができず公園の中で合流しました。予期せぬトラブルでしたが、互いに連絡を取り合い、無事に切り抜けることができました。ガウディが描いた夢の分譲住宅の跡地でもある公園の中は、とても広く全ては回れませんでした。けれども、カラリとした夏の日差しの中、のんびりと散策。とても綺麗な景色と、人々が自然と芸術に囲まれて暮らせるように設計された斬新な構造と、特徴的なタイルの装飾を目に焼き付けてきました。昼食にはスペイン北西部ガリシア地方発祥の郷土料理“エンパナーダ(Empanada)”を食べました。外はサクサクで中はお肉などがゴロゴロたくさん入っていました。とてもおいしかったです。
バルセロナからマドリードへ
グエル公園を見た後、サンツ駅まで戻りました。バルセロナは世界中から観光客が押し寄せて、京都と同様にオーバーツーリズムが問題になっていますが、サンツ駅ももの凄い人でごった返していました。荷物検査や改札を通るのにどこに並んだらいいのか全くわからず大変でしたが、無事予約した高速列車に乗ってマドリードに戻り、泊まっているホテルへ向かいました。車内では、スペイン料理の定番であるボカディージョ(Bocadillo)というサンドイッチのようなものと、搾りたてのオレンジジュースを飲みました。ボカディージョは生ハムが挟まっていてとてもおいしかったです。オレンジジュースはあまり好みの味ではなかったけれど、スムーズな飲み心地でした。
帰りの列車は小林先生と隣の席だったので、将来のことや今回の旅のことなど、色々なことをたくさん話すことができました。この日は遠方までの日帰りだったので、早朝出発しホテルに着いたのは夜遅くになってしまいましたが、世界遺産のサグラダファミリアを間近に見ることができ、とても充実した一日となりました。
5日目 マドリード市内を散策
スペイン広場(Plaza de España)
この日も爽やかな過ごしやすい気候で、青空の中、電車に乗りマドリード市内に向かいました。プリンシペ・ピオ(Principe Pio)駅を9時頃に降りて、まずスペイン広場を散策しました。ここは散歩コースにもなっているので、犬の散歩をして歩いている方やジョギングをしている方がいました。スペイン広場には、セルバンテス(Miguel de Cervantes Saavedra)と彼が描いた「ドン・キホーテ(Don Quijote de la Mancha)」の像が立っていました。セルバンテスは、スペイン語で執筆した作品が世界的に認められた最初の人物であり、スペインで最も有名な文学者です。スペイン広場では、迫力のあるドン・キホーテの像の前で一緒に写真を撮りました。
王宮(Palacio Real)からマジョール広場(Plaza Mayor)まで
マドリードにある王宮は、20世紀前半まで代々のスペイン国王が暮らしてきた宮殿であり、3000部屋ある床面積はヨーロッパで最大規模の豪華な装飾の壮麗な宮殿です。今もなおスペイン国王の公式の宮殿として鎮座しています。歩いて王宮に向かい、中に入るとたくさんの絵画とライオン像に圧倒されました。中には浮き出て見える絵画もありました。奥へ進むと煌びやかな装飾や油絵、王冠なども見ることができ、スペイン国王が住む宮殿に圧倒されました。
その後スペインで有名な道である“Calle del codo”別名「エルボーストリート」を通りサン・ミゲル市場へ行きました。正午近い時間であり、市場は大盛況で今回は中を通り抜けスペインの活気を楽しみました。その後マドリードのシンボルであるマジョール広場へ進みテラス席でお茶となりました。マジョール広場は赤白の壁の4階建ての建物に四方を囲まれたほぼ正方形の広場で、中央にフェリペ3世の騎馬像がありとてもかっこよかったです。みんなで“Café con leche”というスペインで親しまれているミルクコーヒーを飲みました。
マドリードの街をお散歩
日本でいえば日本橋に当たる場所がプエルタ・デル・ソル(Puerta del Sol)です。街の中心部にあるにぎやかな広場で、ここには0 km地点を示すプレートや、マドリード市の紋章になっている熊の像があります。プエルタ・デル・ソルからアルカラ門(Puerta de Alcalá)まで歩き、市民の憩いの場であるレティーロ公園(Parque de El Retiro)を抜けてプラド美術館(Museo del Prado)に向かいました。道端の建物すべてが新鮮で美しく、心惹かれました。小林先生によると、以前のレティーロ公園は危険で歩けない場所だったそうですが、現在は治安もよくなっていて大勢の市民と観光客でにぎわっていました。
プラド美術館
プラド美術館は歴代のスペイン王家のコレクションが展示されているヨーロッパ屈指の美術館で、ルーヴル美術館・エルミタージュ美術館・メトロポリタン美術館と並ぶ世界四大美術館の一つであるとも、世界三大美術館の一つであるともいわれています。入場は学生証があれば無料でいつでも入ることができます。ここにはプラド美術館のディエゴ・ベラスケス、フランシスコ・デ・ゴヤ、エル・グレコなど巨匠の作品だけでなく、美術の教科書で見たことのあるいくつもの興味深い作品をすぐ近くで見ることができました。残念ながら写真撮影ができなかったので、作品の一つ一つをじっくりと目に焼き付けてきました。
フラメンコ(Flamenco)鑑賞
次回予告:ピカソ×闘牛×サッカー
4日目と5日目、学生たちはスペインの芸術の豊かさを肌で感じる貴重な経験を重ねました。ガウディの建築群に触れる中で、その独創性と美的感覚に大いに刺激を受けたことでしょう。次回はいよいよ旅も最終回を迎えます!ピカソの芸術やスペイン文化を象徴する闘牛、学生が観戦したいと願っていた本場のサッカー、歴史あるトレドを探訪。そして帰国の途につくまでの学生たちの姿をお届けします。スペイン旅行の集大成をどうぞお楽しみに!