第1部では、前日本銀行政策委員会審議委員の安達誠司氏が「金融政策の動向」をテーマに講演しました。
安達氏は、消費者物価指数や企業の物価見通しをもとに、インフレの現状と今後の金融政策を解説しました。賃金上昇から物価上昇への波及はまだまだ十分でない一方、輸入物価の上昇が時間をおいて消費者物価に反映される可能性を指摘。物価上昇率だけでなく、その背景や今後の見通しを捉える重要性を説明しました。

前日本銀行政策委員会審議委員の安達誠司氏
2026年9月26日(土)、敬愛大学で、総合地域研究所シンポジウム「最近の金融・財政の動向~金利ある時代の金融・経済リテラシー~」を開催しました。日本銀行や財務省での実務経験を持つ専門家らが登壇し、金融政策、財政、地域銀行の再編の3つの視点から暮らしや地域経済に関わる金融・財政の変化を取り上げました。
会場には、経済学部の指導室「金融研究会」に所属する学生も多く参加しました。金融研究会は、金融業界を志望する学生を中心に、添田准教授の指導の下で調査・研究、討論に取り組む組織です。当日は学生からも質問が寄せられ、専門家に疑問を直接尋ねる機会となりました。
ARTICLE SUMMARY
第1部では、前日本銀行政策委員会審議委員の安達誠司氏が「金融政策の動向」をテーマに講演しました。
安達氏は、消費者物価指数や企業の物価見通しをもとに、インフレの現状と今後の金融政策を解説しました。賃金上昇から物価上昇への波及はまだまだ十分でない一方、輸入物価の上昇が時間をおいて消費者物価に反映される可能性を指摘。物価上昇率だけでなく、その背景や今後の見通しを捉える重要性を説明しました。

前日本銀行政策委員会審議委員の安達誠司氏
また、インフレ率がおおむね目標の2%に達したとの見方を示し、金融政策は、金融緩和からの「出口政策」から、2%程度の物価上昇を安定的に維持するための政策運営へ移りつつあると論じました。今後も利上げが続く可能性に触れながら、物価の上振れと景気の下振れの両方に注意を払う必要があると説明しました。
低成長下で景気を冷やしすぎずに物価を安定させることや、為替・輸入物価の影響、高市政権の財政政策との関係にも触れ、今後の政策運営には大変難しい課題が残っていることを指摘しました。

安達氏に質問する金融研究会の学生

質問に対し、政策転換時の日銀内の議論を語る安達氏
第2部では、本学経済学部の渡辺智之教授(元財務省)が「財政の動向」をテーマに講演しました。
渡辺教授は、技術革新や国際情勢の将来予測が難しい一方、人口減少と超高齢化は長期的に見通せるため、社会保障の持続可能性を財政の重要課題として捉える必要があると説明しました。日本の財政については、税収増で財政赤字の対GDP比が改善する一方、政府債務残高はいまだ高く、金利上昇による利払い費の増加に注意が必要と指摘しました。また、財政赤字を一律に悪いとせず、成長や将来の返済につながる「良い財政赤字」と、そうでない赤字を区別する考え方を示しました。
講演の最後には、社会保障だけに頼らず、人的投資や健康管理、NISAやiDeCoを活用した資産形成など、個人が備える重要性にも触れました。

経済学部の渡辺 智之 教授(財政学、租税法)
第3部では、本学総合地域研究所所長の織井啓介教授が「地域銀行の動向」をテーマに講演しました。
はじめに、2027年4月に予定されている千葉銀行と千葉興業銀行の経営統合を取り上げ、両行を合わせた千葉県内のシェアが、預貯金で34.6%、貸出金で52.0%に達することを紹介しました(2025年3月末現在)。
地域銀行では、人口減少や低金利下での利ざや縮小などを背景に、同一県内での合併・経営統合だけでなく、県境を越えた統合や、資本統合を伴わない業務提携など、多様な再編・連携が進んでいます。さらに、近年は経営の健全性を維持するための「守りの再編」だけでなく、規模の拡大や収益力の向上を目指す「攻めの再編」へと性格が変化しています。総資産20兆円規模の金融グループを目指す動きもみられ、地域銀行の再編が新たな段階に入っていることを解説しました。

国際学部の織井 啓介 教授(国際経済学、国際金融論)
質疑応答では、学生から多くの質問が寄せられました。安達氏には、日本銀行政策委員会で金融緩和の解除を判断した当時について質問があり、春闘の賃上げ率も自身の判断材料の一つだったと振り返りました。
渡辺教授には、「良い財政赤字」の具体例について質問がありました。石油ショックやリーマンショック後の財政拡大による景気の下支えを例に挙げる一方、成長を促す政策が実際に成果を上げるかを見極めることは難しく、慎重な評価が必要だと説明しました。
今回のシンポジウムでは、金融政策、財政、地域銀行の再編を多角的に学び、学生や地域の方々が専門家に直接問いを投げかけることで、「金利ある時代」の経済を自らの生活や将来と結びつけて考える機会となりました。
制作:敬愛人編集部