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マーケティングは、商品を売るだけの仕事じゃない―サービスマーケティング論で学ぶ企業の現場

情報マネジメント学部 丁 明 准教授

2026/07/07

20秒でわかるこの記事のポイント
  • アヲハタ株式会社 取締役の藤原かおり氏を招き、企業のマーケティングを学ぶ
  • 商品開発・売り場・価格・販売促進の考え方を実例から理解
  • カルビー「フルグラ」やアヲハタのブランド戦略を題材に、ヒット商品の裏側を紹介
  • マーケティングは広告や販売だけでなく、顧客を理解し、価値を届ける仕事
  • 学生からの質問を通して、社会で求められる力やキャリアについても考える機会に

「マーケティング」と聞くと、広告をつくったり、商品を売るためのアイデアを考えたりする仕事を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし実際のマーケティングは、それだけではありません。お客様のことを理解し、商品やサービスの価値を考え、それをどのように届けるかを組み立てていく、企業活動の中心ともいえる仕事です。

 

情報マネジメント学部丁 明 准教授による「サービスマーケティング論」では、企業で実際に行われているマーケティング活動を学ぶため、アヲハタ株式会社 取締役の藤原かおり氏をゲストスピーカーに迎えた特別授業を実施しました。藤原氏は、さまざまな大手企業でマーケティング責任者として経験を積んできた実務家です。授業では、カルビー株式会社の「フルグラ」や、アヲハタ株式会社のブランド戦略を題材に、マーケティングの考え方と仕事の面白さについてお話しいただきました。

丁 明 准教授

藤原 かおり(ふじわら かおり)氏のプロフィール
  • 藤原 かおり(ふじわら かおり)
    アヲハタ株式会社 取締役 研究開発本部・マーケティング本部担当

 

【略歴】
慶應義塾大学法学部を卒業後、旭硝子(現AGC)に入社し、新商材のビジネスディベロップメント業務に従事。2001年にマッキャンエリクソンへ転職し、広告のストラテジックプランナーとしてBtoCマーケティングに携わる。
2007年にダノンウォーターズオブジャパンに入社、「ボルヴィック」のブランドマネージャーを務める。2011年カルビー株式会社に入社し、シリアル食品「フルグラ」のマーケティングを担当。その功績により「日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー2016」ベストマーケッター賞を受賞した。
2020年にキユーピー株式会社へ移り、女性初かつ最年少の上席執行役員(新規市場開発担当)に就任。2023年12月よりアヲハタ株式会社の執行役員マーケティング本部長を務め、2024年2月、同社取締役に就任。
現在は研究開発およびマーケティングの両本部を担当し、ブランドの革新と新たな価値創造を牽引している。

企業の現場から学ぶ、マーケティングの本当の姿

丁先生がこの講義を企画した目的は、理論だけでなく、企業の現場でのマーケティングがどのように行われているのかを具体的に知ってもらうためです。マーケティングは単に広告を出したり、販売を促進したりするだけの仕事ではありません。

 

  • 新しい商品を開発すること
  • お客様の行動を理解すること
  • ブランドの魅力を伝えること
  • イベントやキャンペーンを企画すること
  • 企業とお客様との関係を長く築いていくこと

 

こうした一つひとつの活動が、マーケティングの仕事につながっています。授業の冒頭で藤原氏は、「マーケティングとはどんな仕事なのか」を、実際の企業での経験をもとに紹介しました。学生たちは、普段スーパーやコンビニで何気なく手に取っている商品にも、さまざまな戦略や工夫が込められていることを知りました。

3Cと4Pで考えるマーケティング戦略

授業では、マーケティングを考えるうえで大切な視点として、「3C」と「4P」が紹介されました。3Cとは、市場や顧客を見る「Consumer」、競合を分析する「Competitor」、自社の強みを考える「Company」のことです。一方、4Pは、商品を意味する「Product」、売り場や流通を考える「Place」、価格を決める「Price」、販売促進を考える「Promotion」を指します。

 

難しい言葉に聞こえるかもしれませんが、身近な商品に置き換えると分かりやすくなります。たとえば、ある食品を売るとき、「誰に食べてほしいのか」「ライバル商品と何が違うのか」「どの売り場に置くのか」「いくらなら買ってもらえるのか」「どんな言葉で魅力を伝えるのか」などを考える必要があります。お客様、競合、自社の状況を見ながら、商品、売り場、価格、伝え方を組み立て、戦略として実行していくことが重要です。

「フルグラ」はどのようにヒット商品になったのか

授業の中で学生たちの関心を集めたのが、カルビー株式会社の「フルグラ」を題材にしたお話でした。現在では多くの人に知られている「フルグラ」ですが、はじめから大ヒット商品だったわけではありません。藤原氏は、フルグラがどのように市場で受け入れられ、売上を伸ばしていったのかを、当時のマーケティング活動を振り返りながら説明しました。

 

ポイントとなったのは、「商品そのものの魅力」だけではなく、「どのように食べるのか」「どんな生活シーンで役立つのか」を伝えることでした。

 

  • 朝食として食べる
  • ヨーグルトと合わせる
  • 忙しい日でも手軽に栄養をとる

 

こうした食べ方や利用シーンを提案することで、単なる食品ではなく、生活の中に取り入れやすい価値として伝わっていきます。また、売り場づくりや広告、キャンペーンなどと組み合わせることで、お客様が「商品を知り、手に取って、継続して買う」といった流れが生まれます。学生たちは、ヒット商品の裏側に、細かな分析と地道な工夫が積み重なっていることを実感したようでした。

アヲハタが目指す、フルーツの新しい価値

後半では、アヲハタ株式会社のマーケティング戦略が紹介されました。アヲハタといえば、ジャムを思い浮かべる人も多いでしょう。しかし、単にジャムをつくる会社ではなく、「フルーツの価値」を広げていく企業として、さまざまな挑戦をしていることが語られました。講義資料では、2028年ビジョンとして「フルーツで世界の人を幸せに」という方向性が示されていました。

 

既存の事業を大切にしながら、新しい商品やサービスにも挑戦していく。
フルーツそのものの魅力を生かし、食べ方や楽しみ方を提案しながら、お客様との接点を広げていく。

 

そこには、ブランドを守るだけでなく、時代に合わせて育てていくマーケティングの考え方があります。ブランドとは、ロゴや商品名だけではありません。

 

  • この会社の商品なら安心できる
  • この商品を選ぶと、少し気分が上がる
  • このブランドの考え方に共感できる

 

買い手側のこうした気持ちの積み重ねが、ブランドの価値になっていきます。マーケティングとは、企業の姿勢や価値を社会に伝えていく仕事でもあることを学びました。

学生からの質問に、実務家の言葉で答える

授業の最後に、学生たちから事前に寄せられた質問に藤原氏が答える時間も設けられました。

 

「どんな人が社会で必要とされますか」
「マーケティングの仕事に向いている人はどんな人ですか」
「商品開発のアイデアは、どのように出していますか」
「企画を進める中で対立することはありますか」

 

学生たちの質問は、授業内容だけでなく、将来の働き方やキャリアにも関わるものが多くありました。藤原氏は、社会で必要とされる人について、知識だけではなく、経験を積み、4年間を充実して過ごすことの大切さを話しました。若い頃には本をたくさん読み、世界で何が起きているのか、世の中がどのように変化しているのかを考えていたそうです。

 

また、マーケティングに向いている人として、吸収力があり、柔軟で、行動できる人を挙げました。論理的に考える力だけでなく、感性も大切であり、その感性は学生時代にも磨くことができると語りました。

 

商品開発のアイデアについては、「ゼロから何かを生み出せる人はほとんどいない」と話し、何かと何かを組み合わせること、世の中が何を求めているのかを見たり聞いたりすることの大切さを伝えました。企画を進める中で意見が対立することもあるそうです。しかし、逃げたり怒ったりするのではなく、最後の目標は同じであるはずだと考え、話し合いを続けていくことの大切さを強調していました。

事前に学生から寄せられた質問を丁先生が読み上げ、具体的にお答えいただきました

理論と現場をつなぎ、将来のキャリアを考える

今回の特別授業は、マーケティングの理論を学ぶだけでなく、それが実際の企業活動の中でどのように使われているのかを知る貴重な時間となりました。企業の第一線で仕事をしてきた藤原氏の言葉は、学生たちにとって、社会で働くことを具体的にイメージする機会になったようです。3Cや4Pといった基本的な考え方が、商品開発や売り場づくり、ブランド戦略、顧客との関係づくりに深く関わっていることを学べたのではないでしょうか。

 

同時に、藤原氏のキャリアや仕事への向き合い方に触れることで、マーケティングの仕事に必要な力や、学生時代にどのような経験を積むとよいかを考える機会になりました。丁先生がこの授業で学生に学んでほしかったのは、マーケティングを「販売促進」や「広告」だけで捉えないことです。お客様を理解し、商品やサービスの価値を高め、企業と顧客との関係を築いていく。その一連の活動こそが、マーケティングの本質です。

 

身近な商品がどのように生まれ、どのように届けられ、どのようにブランドとして育っていくのか。今回の授業は、学生たちがマーケティングの面白さと、これからのキャリアを考えるきっかけとなりました。

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